NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 - ニコンの定番オールド標準レンズ

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Nikon NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm(Nikomat FTnに装着)
Nikon NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm
 このレンズは姉から譲り受けた Nikomat FTn のセットレンズでした。 1970~80年代当時、僕も姉もニコンを使って、姉がタヒチで水没させた Nikomat FTn の代替カメラ・レンズがコレだった。 『もう使わない』という事で、前世紀末(イヤ今世紀だったか)に僕のもとへやってきた。

NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm - 1972年発売

 ニコンの一眼レフ用F1.4標準レンズの初代は1960年発売で焦点距離が5.8cmの NIKKOR-S Auto 1:1.4 f=5.8cm(6群7枚)だった。 初代はバックフォーカスを確保するために少し長い焦点距離とし、残存収差も多めのレンズだったらしい。 NIKKOR-S Auto 1:1.4 f=50mm(5群7枚)が1962年に発売された2代目のF1.4標準レンズで、焦点距離が50mmとなり残存収差もニコン社内的には満足できる製品になったらしい。 今回のレンズは更にマルチコーティングが施された製品で、フィルター枠が銀枠から黒枠へ変更されて1972年に発売された。 ただし、初期製品と同じ光学設計のままだったのかは知らない。

レンズ構成

レンズ構成は5群7枚の拡張ダブルガウス型
レンズ構成
 このレンズは5群7枚構成の拡張ダブルガウス型で、標準的な4群6枚のダブルガウス型に対して後群の最終凸レンズを2枚で構成している。 この2枚の凸レンズによりコマ収差を改善しているらしい。 Takumar 1:1.4/50 など、この時代の同仕様レンズには前群の張り合わせを分離した構成が多くなっていたけど、ニコンでは貼り合わせのままだった。 ゴースト・フレアを嫌って空気と接触する面を増やしたくなかったのかも知れない。
 僕の手元に来た時にはレンズ後群内に薄クモリとカビがあったので、分解清掃してあげた。 その際に固着したUVフィルターを無理に外したらフィルター枠が少し変形(真円度ズレ)してしまい、ヘリコイドが重くなってしまった。 フィルター枠がヘリコイドのメス側にネジ込む構成なので、フィルター枠が変形するとヘリコイドが重くなったりトルクムラを生じてしまうのだ。 フィルター枠を真円に戻せば良いんだけどね。

描写特性

遠景描写

 絞り開放ではかなりフレアが多い描写だけど解像感はそれなりにある。 1段絞れば中央付近のフレアは消え、F2.8で周辺のコマフレアも消える。 絞り開放での周辺光量落ちは素直な落ち方なのでノスタルジックな効果として使えるけど、コマフレアが多すぎると思う。 また、F11以上に絞り込むと回折の影響でボヤけ始めるので、F5.6~F8がベストな描写だろう。 なお、コマフレアには色収差による色付きが認められるけど倍率色収差は僅かである。
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8

夜景描写

 点光源に対して絞り開放では盛大なサジタルコマフレア発生が確認できる。 中央のフレアも多いのでピント合わせに難儀するほどだ。 F2.8に絞れば随分とスッキリするけど画面隅ではサジタルコマが少し残っている。 F4まで絞ると画面全域で充分使える点光源描写となり周辺光量落ちも目立たなくなる。 夜景撮影ではF4まで絞って使うのが良い。 
NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm 絞り:F4
絞り:F4

逆光特性

 前玉に陽光を拾う様な逆光条件でも逆光フレアの発生が良く抑えられている。 逆光フレアによるコントラスト低下はオールドレンズにしては少ないのはマルチコーティングのお陰なのだろう。 画面内に太陽を入れ込むと強い対角線虹色ゴーストが現れるが、オールドレンズ然としたゴーストは効果的に使うと良いだろう。
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4(前玉に陽光を拾っている)
絞り:F2.8(逆光)
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F5.6
絞り:F5.6

一般撮影

 小デフォーカスな後ボケには2線ボケの傾向が認められるので、条件によってはザワつくことがあるけど、大デフォーカスではスムースにボケてくれる。 やはり絞り開放ではコマフレアによりホワホワの描写になるけど、ちょっと絞れば締まりのある描写に変貌する。
 発色は悪くないが派手さはなく、こってり系の CONTAXのCarl Zeiss に比べたら「普通」という感じだ。 また、明るいレンズに有りがちな軸状色収差による前後ボケの色付きは殆ど気にならないレベルに補正されている。
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F5.6
絞り:F5.6
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F8
絞り:F8
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 絞り:F1.4(ヘリコイドアダプタで接写)
絞り:F1.4(接写)

あとがき

Nikomat FTn と NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm による懐かしい一齣
懐かしい一齣
 1975年の夏に Nikomat FTn と NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm とで北海道・室蘭本線のSLを撮り歩いた。 「画質」なんて考えないで夜は絞り全開で撮っていたので、操車場のライトによる対角線ゴーストが出まくりだしソフト描写な写真ばかりだった。
 また、この時代では走る被写体に対して置きピンで一発勝負だったので、実際に機関車が来て『ここだ!』という構図では置きピンの位置と違ってたりするのでピントがヌルイ写真だったり、動体ブレした写真が沢山あった。 いやぁ、懐かしいよねぇ。
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