Rolleiflex SL2000F - 1981年発売

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Rolleiflex SL 2000 F(ウェストレベルファインダー使用状態)
Rolleiflex SL2000F(ウェストレベルファインダー使用状態)
ムービーカメラの様な容姿だけど、れっきとした135mm版の一眼レフである。 1976年のフォトキナにアンダーテーブル出品されたらしいが、正式なフォトキナ出品は1980年だった。 1970年代のローライの135mm版一眼レフは絞り込み測光方式の Rolleiflex SL35 から始まり、開放測光方式へと改められてきたが、発売されたカメラはどれも成功したとは言えなかった。 そこで全く新しいコンセプトの135mm版一眼レフとして中版カメラの様にフィルムマガジン交換式の Rolleiflex SF2000F を投入したのである。

Rolleiflex SL2000F

中版カメラの様に四角いカメラなので大きいとか小さいとか比較が難しいけど、小さいとは言えないだろう。 カメラの基本的なスペックは以下の通り。
 項 目  仕 様
 モータードライブ   モータードライブ内蔵 約3駒/秒 
 シャッター   縦走り電子制御式フォーカルプレーン 16秒~1/1000秒 
 フィルム交換   マガジンシにより途中交換可能 
 ファインダー   アイレベル / ウェストレベル切換え可能 
 スクリーン   交換可能 
 自動露出方式   絞り優先式シャッター速度自動制御 
 測光分布   中央部重点測光 
 ストロボ調光   TTLダイレクト調光 
 レンズマウント   ローライQBM(Quick Bayonet Mount) 
 電源   単三電池5本 
 ボディ重量   1,070g(マガジン、バッテリー付) 
当時はモータードライブ「内蔵」一眼レフカメラは新鮮だったが、それ以上にカメラの容姿が異端だった。 『あれぇ、名前の2000って何だ?』と感じた人もいると思うが、1976年にアンダーテーブル出品されたときは最高速1/2000秒のシャッターを搭載していたからで、1981年に発売されたときは最高速1/1000秒になっていた。
古くからある中版カメラで似たコンセプトのハッセルブラッドは基本的に正方画面なので、構図の縦横を考えなくても良いのだけど、135mmフル版は縦横の構図も重要な写真表現だ。 コレ『どうすんだよぉ!』というのが率直な感想だった。

カメラ正面

カメラ正面 アイレベル状態(左)ウェストレベル状態(右)
カメラ正面 アイレベル状態(左) ウェストレベル状態(右)
前方投影だけ見ると充分に小さいカメラなんだけど、手のひらには納まらない奥行きがある。 マウント右下(写真では左下)のボタンは絞り込みボタンで絞り込み状態と開放状態とがトグルする。 マウント左下(写真では右下)のボタンはレンズ着脱ロック解除ボタンで赤色がアクセントになっている。 Rolleiflexロゴの右下(写真では左下)のLEDはセルフタイマー表示用だけど、カウントダウン中に継続点灯するだけでシャッター走行タイミングが判らない。

レンズマウントまわり

レンズマウントまわり
レンズマウントまわり
自動絞り機構はM42マウント時代と同様にレンズの絞り込みピンを押し込む方式で、確か純正の自動絞り対応M42マウントアダプタが発売されていたと思う。 当初は絞り込み測光方式だったローライQBMマウントは1974年頃に開放測光方式に進化した。 そして絞り値連動機構はマウント面上方に開けた円弧上の溝の中に連動ピンがあり、開放値補正された絞り値をカメラに伝えている。 対応方法は開放絞り値の違いを連動ピンの角度で補正する方式で、ニコンのAI方式と同じである。 従って、レンズの設定絞り絶対値はカメラに伝わらない。 そこで、レンズのマウント面に段を付けて段の深さで開放値補正ピンの押し量を変えることで開放補正値を伝えている。 この開放値補正情報はファインダーの絞り値表示に用いられ、開放測光には直接関わらない。 SL2000F の困る仕様としては、Tマウントアダプタなどの絞り連動ピンを持たない望遠レンズを付けた場合は、絞り込みボタンで絞り込みモードに設定しないと実絞りAEが出来ないどころか露出計も働かないことだ。 実は開放測光に対応していない古いローライレンズを装着した場合も同様で、カメラの仕様を知らない人は故障かと思ってしまうのだ。
このカメラのフォーカシングスクリーンはマウント側から交換可能なのだけど、スクリーン枠を外す明確な指標や解除ピンなどが無い。 実はプラパーツの両端を指2本の爪で押しながら下側へ引き下げてスクリーン枠ごと外す方式で、説明書を読んでもよく判らない手順なのである。

カメラ上面

カメラ上面
カメラ上面
カメラ前方にウェストレベルファインダがあり、フードを引き上げれば直ちに利用可能になり、ルーペレンズも用意されている。 上面右側の大きなダイヤルはシャッター速度ダイヤルで位置でロックが掛かり、それ以外はフリーだしクリックすらない。 クリックがないためか、シャッターダイヤルを回す感触はズリズリしたプラスチックの摩擦感が強くて気持ち悪いし、でのロックが掛かる感触がおもちゃの様で高級感がない。 左側後寄りのダイヤルは露出補正ダイヤルで+2~ー1段の補正が可能だ。 露出補正ダイヤルはボディと面一になっていて、ロックはなくクリックがあるけど大変回し難い。 カメラ後方左側に突き出ているのがアイレベルファインダーで、ウェストレベルファインダーを閉じていれば利用可能になり、±4ディオプタの範囲で視度調整が可能だ。 カメラ後方中央にあるのはメモリーとセルフタイマー選択で、通常は「0」位置で撮影するが、セルフタイマー撮影の場合は「10s」を選択し、メモリーホールド(AEロック)したい場合は「Memo」を選択する。 「Memo」ではシャッター速度が記憶されるだけで、露出量が記憶されるわけではないので絞りを変えると露出はズレる。 カメラ後方右にあるのはメインスイッチで「O」がオフで、それ以外に動かす場合はダイヤルを押して回す。 「I」が単写モードで「C」が連写モードで「B」はバルブ露光モードである。

カメラ右側面

カメラ右側面
カメラ右側面
カメラ前方側から レリーズボタン / マガジン引き蓋 / マガジン制御レバー / マガジン着脱ボタン / マガジン引き蓋収納溝 / バッテリーケース着脱ボタン である。 マガジン制御レバーには 通常撮影(SE) / 多重露出(ME) / フィルムインサート着脱 / マガジン着脱 の4ポジションがある。 マガジン引き蓋を挿入したままでは撮影ポジションを選択できない。 また、マガジン引き蓋を挿入しないとマガジン着脱ポジションを選択できない。 マガジンはバッテリケースと一緒に外れるので、マガジンを外した状態ではカメラを動作させられない。
なお、通常の撮影状態ではマガジン引き蓋をマガジン後方の収納溝に差し込んでおけるので、引き蓋を紛失する事はないだろう。

カメラ左側面

カメラ左側面
カメラ左側面
カメラ前方上側にホットシューがあり、その後ろにシンクロソケットがある。 右側面と対象位置にもレリーズボタンがあり、その後ろにリモートソケットがある。 フィルムマガジン部に付いているのはフィルム感度設定ダイヤルとフィルムカウンターである。 イルフォードのベースが薄い72枚撮フィルムに対応しているのでフィルムカウンターは72駒まである。 知らない人はハーフサイズカメラかと思うかも知れない。

交換式フィルムマガジン

交換式フィルムマガジン
交換式フィルムマガジン
多数のフィルムマガジンを持っていれば、カラーフィルムとモノクロフィルムとを使い分けたりできる。 フィルム感度の設定はフィルムマガジンにあるので、感度が異なるフィルムマガジンに交換しても予め設定してあるフィルム感度で露出制御される。 残念ながら『いやぁ、便利だ。ありがたい!』とは感じないのでフィルムマガジンは1個しか持っていない。

複雑なフィルム装填

複雑なフィルム装填
複雑なフィルム装填
小型のマガジンにフィルムを詰め込んでいるため装填方法も独特で、間違えると悲惨な事になるので説明書をよく読んで覚えておかなければならない。 かなり無理なフィルム給送経路なので駆動モーターに大きな負荷がかかり、電源にはNi-Cd電池などの内部抵抗が少なく大電流を流せるタイプでないと撮影駒数が増えたところで途中止まりになり易い...怖くて使えないカメラだった。

ファインダー表示

Rolleiflex SL 2000 F のファインダー表示
Rolleiflex SL2000F のファインダー表示
ファインダー内情報表示は視野外左右に設けられていて、右側視野外に絞り設定値が表示され、左側視野外にシャッター速度が表示される。 表示は赤色LEDが使われ、LEDの各セグメント上のマスク板を通して数値が見える。  最初にファインダーを覗くとどちらが絞り値でどりらがシャッター速度か迷うし、ファインダー長手方向に表示があるので視線移動が大きすぎる。 ファインダーの右側と下側とかにすれば迷う事もないし視線移動も少なかったハズだ。 また、LED発光が測光に影響するらしくLEDを点滅させて消灯期間中に測光しているらしく、表示がチカチカして催眠術にかかりそうだ。
シャッター速度は二つのセグメントを使って中間速度を表現する方式だが、不思議な事に絞り値は1段刻みでしか表示されない。 なので、50mm F1.8を装着して絞り開放にするとF1.4と表示されるし、F5.6とF8の中間に設定してもどちらかの絞り値しか表示されない。 絞りのクリックが1段刻みとはいえ、カメラ内部では中間絞り位置でも問題なく伝達されているので中間絞りも表現してほしかった。
ファインダーをウェストレベルに切り換えると左右が反転するので情報表示も左右反転して数字もひっくり返しになるので判り難い。 また、中版カメラじゃないのでルーペを使わないで覗くと映像が小さすぎて大まかな構図程度しか確認できないが、ルーペを使えば拡大した映像を覗くことができる。
測光方式は中央重点測光で、ファインダー中央部の長方形に暗くなっている領域で中央重点測光している。 恐らく方式的には CANON F-1 と似たコンデンサのビームスプリット方式だと思うがスプリット部分が焦点面から遠いらしく、目を振るとスプリット部分が動いて見えたり 歪んで見えたり 下側にズレて見えたり するのが気持ち悪い。

構え方

Rolleiflex SL 2000 F の構え方(ウエストレベルファインダー時)
Rolleiflex SL2000F の構え方(ウエストレベルファインダー時)
このカメラはどうやっても上手くハンドリングできない。 専用グリップもあるけど、必要なものなら最初からそういうデザインにするべきなので断固使わない。 結局、左手でカメラを底から包み込み、その左手人差し指で右側面のレリーズボタンでシャッターを切る様にしていた。 空いた右手でピント調節と絞り調節を行うので普通の一眼レフとは逆になるけど、使い慣れたハッセルの操作性に近くなる。 ただし、望遠レンズを装着すると右手でレンズを支えるのには違和感があなるので、普段から「逆手」で構えた方が良いのかも知れない。
また、この構え方のままウェストレベルファインダーを使えば二眼レフやハッセルの様に「撮られる」ことを被写体に意識させない撮影が可能になる。

TAMRON ADAPTALL マウント

TAMRON ADAPTALL マウント
TAMRON ADAPTALL マウント
昔のタムロン製アダプトールマウントにはローライQBM用の交換マウントアダプタも用意されていたので、タンロンレンズをローライのカメラに流用する事ができた。 タムロンレンズの絞り回転方向はニコンと同じなので、回転方向が逆になるローライマウントの絞り連動ピンはATAPTALLマウント内で回転方向を変えてカメラに伝達している。 しかし回転が逆なのでニコンAIマウントのAI連動の様に表示絞りと連動ピンを開放絞りに応じて変化させることが出来ない。 苦肉の策として、QBMマウント用のADAPTALLには各開放絞り値に応じたシールが付属していて、装着するレンズに対応したシールを張り付ければ Rolleiflex SL35E の様な光学式絞り直読カメラで絞り値がファインダー内で読み取れる様になっていた。 僕は光学式絞り直読カメラでは持っていないのでこのシールを使う事はなかった。
残念なのは開放絞り値補正に対応していないので Rolleiflex SL2000F では普通に撮影出来るけど、ファインダー部の絞り表示が機能しない事だ。 QBM用ADAPTALLマウント面を削れば絞り値が表示可能になるけど、特定の明るさのレンズにしか対応できなくなってしまう。 ちなみに、僕が持っているローライ純正レンズは標準50mmレンズだけなので、タムロンの出番はそれなりにあった。

あとがき

使い易いとは言えないカメラ(TAMRON SP 80-200mm F/2.8 LD装着 )
使い易いとは言えない SL2000F(TAMRON SP 80-200mm F/2.8 LD を装着 )
Rolleiflex SL2000F は1980年のフォトキナで最も話題になったカメラで、カタログキャッチコピーは「独創感」だった。 独創すぎてカメラを上手く構える事すら難しく、メインで使いたいカメラではない。 後継機の ROLLEIFLEX SL3003 ではカメラ上面にレリーズボタンが装備され、ビデオカメラの様な構え方が基本になった様だ。 Carl Zeiss のレンズを使いたいなら CONTAX があったし、弄るのが楽しいだけのゲテモノだったと言える。 その後 Rolleiflex 3003 / 3001 を発売したが、売れないままローライの一眼レフは1995年末に終焉を迎えた。

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