SONY α9 + SEL200600G 実戦レビュー

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SONY α9 Ver.6.00 + SEL200600G
実は、SONY機材「だけ」でスポーツ取材を開始したのは、2018年の10月からで、SONY α9のファームウェアがVer.3.10の頃だ。 その当時は挙動不審なAF動作をなだめながら、ピントが合っている駒を作り出す感じだった。 その後、Ver.5.00でAFの劇的な進化をとげ、今のVer.6.00に至っている。
Ver.6.00を試していたら、10月3日に新しい SONY α9Ⅱ が発表された。 幸い、僕にとって買換えを誘う変更点は無い様なので、少なくとも今シーズンは、初代 SONY α9 で取材を続けるだろう。 キヤノン風の名称で表現するなら SONY α9n といったところか...ニコンもキヤノンも『ほっ』としたに違いない。


合焦率

ある選手の写真で合焦率を算出
さて、前回のVer5.01を試した試合会場は、ISO:8000 Tv:1/800s という暗めの会場だったけど、今回のVer.6.00を使った試合会場は更に暗くて、ISO:10000 Tv:1/640s という厳しい環境だった。 その暗くて厳しい会場で、ある選手のフリー演技を撮影した606駒について、合焦率を算出してみた。

   ◎: 309 (ガチピン)
   ○: 279 (合焦)
   △: 7 (甘い)
   ×: 0 (ピンボケ)
   ××: 8 (ボケボケ)
   ◎○: 588  588/606 = 0.97
   ◎: 309  309/606 = 0.51
   OK: 547  547/606 = 0.90

SONY ILCE-9 Ver6.00 + SEL200600G の組合せでも、前回のVer5.01同様に97%という高い合焦率を示してくれた。 なお、ボケボケ写真はトラッキングエラーにより、あらぬ部位を測距した結果で、トラッキングにバグや調整不足が潜んでいると感じた。(カメラのトラッキングが『あれぇ』と思ったら、レリーズしないのが普通だけど、撮っちゃう場合もあるのよ)

この「◎+〇」の合焦率は一般的な基準で評価してるけど、僕のセレクト基準はもう少し厳しい「OK」判定を実施している。 その判定結果でも90%という高い判定結果となった。

シャッター速度が1/640sという遅さだったので、1/1250sで撮影出来たなら被写体ブレが無くなり、合焦率・ガチピン率がもっと高かっただろう。 手足の動作による被写体ブレは容認するけど、顔の被写体ブレは容認し難いのだ。 279駒の〇判定の駒には若干の被写体ブレにより、◎判定(ガチピン)にならなかった駒も多い...詩果ちゃんママ、すまん...普通に使う写真としては充分なクオリティーだけどね。


近側被写体飛びが抑制された

 Ver3.10の頃は腹が立つロックオンAFだった
丁度一年前の試合では SONY α9 Ver.3.10 で取材していた。 ロックオンAFで選手を撮影していても、近距離側に障害物があったりすると、「見事に」障害物にピントが合ってしまう不具合があった。 この現象が発生すると、卒倒しそうになるくらいショックで、犯罪と呼んでも過言ではない。 僕は年寄りなので、心臓に悪いショッキングな挙動は止めて貰いたい。

 Ver.5.00以降では近距離障害物にピントが飛ぶ事はない
この現象はVer.5.01では解消されていて、ちゃんと選手をトラッキングする様に改善されていた。 Ver.6.00でも同様で、近距離の障害物へピントが吹っ飛ぶ事はないので、安心してロックオンAFを使い続けられる。 Ver.5.00からは、ソフトウェア担当者を換えたんじゃないかと思うほど良くなった。


改善して頂きたい事

モニターの暗転バグ

画像を再生して使える駒をチェックしていて、『さて次の選手の撮影だ』と思って、シャッターボタンを半押ししても、EVFが真っ暗(F値が未定表示)で『なんじゃこりゃぁ!』と思ってEVFから眼を離しても、TFTでも真っ暗だったりする。 こうなると撮影出来ないし、どうにもならない。
 α9の初期バージョンでもあったバグで、最近は発生してなかったんだけど、ソニーさんはVer.6.00で再発させやがった。 画像再生状態から撮影状態への状態遷移に絡むバグだと思うけど、GUI系は状態遷移しちゃってるのに、撮像系は寝てる感じだなぁ。 頭の悪いソフト屋がやらかす典型的なバグの一つだろう。 大抵は状態遷移のタイミングによって発生するので、評価部門をすり抜けてしまい、市場で現象がポツリポツリと出てしまうのだ。 早急に治してよね。
【追記】
以前のバグは、電池脱着で復帰だったけど、今回のバグは電源オフ/オンで復帰した。 パワマネタスクは活きている様だ...まっ、重欠点ですな。

フォルダ番号

スロットの自動切換えに設定してあると、新しいCFカードを入れた場合でも、カードを初期化した場合でも、カメラが覚えているフォルダ番号から始まってしまう。 スロットが自動的に切換った場合に、フォルダ番号が継続されるので有難い機能ではある。 しかしながら、新しいメディアを挿入した場合は、フォルダ番号を100MSDCFから初めて貰いたい事が多い。 頼むから、メニューにフォルダ番号リセットを追加して欲しい。 また、ファイル番号も「強制リセット」というメニューも欲しいなぁ。

ロックオンAFの顔距離

顔があるのに手先に固執するロックオンAF
Ver.5.00以降のロックオンAFは大変安定している。 ただし、選手がくるくる回るフィギュアスケートだと、ロックオンする場所が変化してしまう事が多々ある。 結果として背景の壁を追尾してしまう事があるので、「顔優先」の場合は、検出した顔が現在の測距位置から多少遠い場合でもちゃんと遷移してもらいたい。
また、撮影対象が「シングル」なのか「ペア」なのか「大人数」なのかにもよるので、対象となる顔の数などを事前にパラメータとして設定出来るべきだ。 上の写真はロックオンさせた瞬間に顔位置に手があり、「手先」をロックオンした様だ。 でも、シングル競技なら「大抵は」顔にピントを合わせて貰いたいので、この顔距離なら顔にピントを合わせて貰いたいという事だ。

僕はAFオン釦とAEロック釦とを使い分けているけど、例えばAFオン釦は顔検出有りロックオンAFで、AEロック釦は顔検出無しロックオンAFとかに出来れば良いのだけどね。


AFが背景に抜ける癖

顔が見当たらないと高輝度背景に抜ける事がある

現測距位置が顔から離れていると顔に戻らない
人物などの主被写体が後ろを向いたとき、背景のキズだらけの白壁にピントが行ってしまう癖がある。 測距していた部分に対して、背景が明るい場合に「ひょいっと」ロックオンする場所が移動してしまう。
顔が検出されなかったり、顔が遠かったりしても、デフォーカス絶対値が最小な部位で堪えてくれたならボケボケにはならないハズだ。 この現象は必ずという訳じゃなく、何かがトリガーになっている気がするけど、もう少し賢いファームウェアにしてほしいぞ。


FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS

・画質は問題なく、綺麗でシャープな写真が撮れる。
・ボケも素直で、背景に輝点があってもうるさくならない。
・ズーム環が軽く、伸縮タイプのFE100400GMとは大違いだ。
 また、ズームの回転各も操作し易くて良い。
・三脚座の回転がスムースではなく、使っているうちにゴリゴリしそうな気がする。
・三脚座がアルカスイス互換タイプではないのが惜しい。
・ワイド端が200mmまでなのが、辛い事がある。
 100mmまでなら良かったのにと思う事があった。
 選手と近いリンクレベルだと、ついつい手足が切れてしまう...


20駒/秒は必要なのか?

2017年に使い始めた当初は、20駒/秒は未曽有の体験だったけど、今は普通の体験
ネットの話題では、電子シャッターは使えないとか20駒/秒は要らないとか、色々書かれてますなぁ。 僕は一般の観客の隣で撮影する場合もあるので、無音の電子シャッターは大いに助かるし、無音は撮影のエチケットだと思ってます。 また、選手の姿勢と表情(閉じ眼や半眼など)がベストになる瞬間を得るには20駒/秒は絶大な威力を発揮する。 阿呆の様に、20駒/秒で連写し続けている訳じゃないので、64GBの記録メディアで1カテゴリを充分撮影できる。 全データ消失という事件を避けるために、各カテゴリごとに記録メディアを換えているので64GBが丁度良い。

最良の駒を選ぶための20駒/秒だ
やかましい一眼レフと違って観客との距離が近いので、撮影写真のセレクトをしていると、後ろのお嬢さんから『前の選手の写真をもっと見せて』なんて言われちゃう事が多くなった。 もう、一眼レフでの撮影は禁止にしてもイイんじゃないかなぁ。


まとめ

リンクレベルからの撮影ではワイドは100mmまで欲しい
SONY α9 Ver.6.00 と FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS の評価が混在しちゃったけど、この組み合わせでの性能は素晴らしいと思う。 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS に慣れてしまったので、ワイド端が200mmというのは長すぎると感じる事も多かったけど、ちびっ子のノービス選手に対しては600mmは大変有効だった。

なお、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS はワイド端にすればコンパクトになるし、比較的軽いことから、スポーツ取材以外で今後も活用する予定だ。 年寄りにとって、大きくて重い機材は辛いのよ。

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4 件のコメント :

  1. 陸上競技を撮っていてもシャッター音は気になります。
    サイレント撮影だとスタート時に電子音より前からシャッターが押せるので、スタートの瞬間が取れます。
    表彰式の撮影でも観客の前にカメラマンが出てバシャバシャと音を出して撮っているのも、アナウンサーの声の邪魔になる気がします。
    これからはサイレントシャッターが定番になると思います。

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    1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  2. はじめまして。
    室内競技の撮影ですが、フリッカーはどう対処されているのでしょうか?

    α9Ⅱが期待ハズレだったためα9の購入を検討しているのですが、フリッカーを考えると購入に踏み切れません。

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    1. ハッキリ言って、フリッカー処置は地獄です。
      https://photoofthelife.blogspot.com/2019/06/sony.html

      でも、『観客・選手に邪魔にならない撮影なら仕方なし』と諦めてますが、ホテルで眠れない処理はやりたく無いですね。

      表彰式では、集まったおばちゃんたちの前で撮影しますし、フジテレビが入ってたりしますが、表彰式なので、メカシャッター+ストロボでカシャカシャ撮ってますよ。
      このシーンでは観客も選手も撮られる事が判ってるので、光・音があった方が良いかと....

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