PETRI C.C Auto Petri 55mm F2 の実態

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PETRI C.C Auto Petri 55mm F2(旧型)
PETRI C.C Auto Petri 55mm F2(旧型)
 1967年ころに「ペトリ V6 F2」と銘打った PETRI V6 と C.C Auto Petri 55mm F2 とのセットカメラが激安の¥21,600円(ケース付きは¥23,800円)で販売されていた。 確か 55mm F1.8 とのセット価格が¥25,000円で 55mm F1.4 とのセット価格が¥30,600円だったので、F2レンズが如何に低価格だったかが判るけど、本当にF2レンズが低コストで生産できたのか疑念がある。
 巷の噂ではペトリの C.C Auto Petri 55mm F2 と C.C Auto Petri 55mm F1.8 とは同一光学系らしい。 本当かどうか確かめるため、実際に C.C Auto Petri 55mm の中古品をオークションで¥81円でポチってみた。 購入したレンズは C.C Auto Petri 55mm F2 の中でも旧型に属するもので、ジャンク扱いのカビ玉である。

分解清掃

分解中の C.C Auto Petri 55mm F2
分解中の Petri 55mm F2
 ヘリコイドがかなり重くて絞りも動作不全だしレンズ面にはガビが群がっている。 分解してみると、不要な部分まで油まみれで粘っているし、ヘリコイドはう〇こ色のネチャネチャする妙なグリスまみれなので、だいぶ前に素人によってメンテナンス?されたのは明らかだ。
 絞りユニットを羽根まで分解・清掃してから回転駆動リングを湿る程度に潤滑し、ヘリコイドも清掃してから中粘度のヘリコイドグリスでグリスアップし、各レンズ面のカビ除去と清掃をして組み上げた。 残念ながらレンズ最終面はカビの浸潤が酷くてカビ痕が残ってしまったけど、¥81円のレンズが綺麗な「べっぴんさん」に見えてきた。
 なお、このF2レンズを分解したところ、以前に分解したF1.8レンズと内部構造の違いは殆ど見当たらないけど、絞り設定伝達カムが金属製のコストダウン前の製品である事が判った。

レンズの外観

55mm F2(旧型)の絞り環は逆回り
55mm F2(旧型)の絞り環
 このレンズは初期型に属するので通常の C.C Auto Petri とは絞り環の回転方向が逆で、後の EE Auto C.C Petri と同じ回転方向になっている。 なぜ、絞り環の回転方向を変える必要があったのかは不明だ。 レンズの開放F値がF2なので絞り環もF2より明るい方へ回る余裕は設けられていないし、F1.8レンズのF2.8→開放端は1段以上の間隔だったけど、F2レンズのF2.8→開放端はキッチリ1段の間隔になっている。
開放なのに撮影時にF2の絞りが出て来る
撮影時に絞りが出てくる
 また、絞り環をF2開放にして、絞りモードをAuto(自動絞りモード)からManual(マニュアル絞りモード)に切換えると、レンズ内の絞り羽根がちょっとだけ出て来る。 また、絞り環をF2開放にてAutoのままペトリカメラでレリーズすると、ちょっと絞られて撮影されてから絞り羽根が全開に戻る。 つまり、カメラのファインダーではF1.8の像が見えているけど、撮影の瞬間はF2となる様に「わざわざ」絞り環をF2の位置までに機能制限する仕様だったと思われる。

光量比較

C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:F2開放
F2レンズの開放
C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:全開
F2レンズの全開
C.C Auto Petri 55mm F1.8(新型) 絞り:F1.8開放
F1.8レンズの開放
 現代だとマウントアダプターを使ってデジタル一眼カメラで撮影出来るので、絞りが全く出ていない全開状態(Autoモード)での比較実写が可能だ。 絞りが出ているF2開放の周辺光量落ちに対して絞り全開の周辺光量落ちの方が中央が明るくて光量落ちが激しいので、ちょっと出ている絞り羽根が有効に働いている事が判る。 F2レンズの絞り全開の中央光量はF1.8に近いと思われる。
 また、F1.8レンズ開放の周辺光量落ちはF2レンズの全開と比較してピーク・ボトムは同じ程度だけど光量落ち特性カーブが異なっているのが判る。 これは旧設計のF2光学系と新設計のF1.8光学系との違いやコーティング・内面反射などの違いなのだろう。
 なお、普通の写真画像だとガンマが掛かっていて判り難いので、同一露出量でリニア現像した画像をグラフ表示して判り易くしています。

遠景描写比較

C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:F2開放
F2レンズの開放
C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:全開
F2レンズの全開
C.C Auto Petri 55mm F1.8(新型) 絞り:F1.8開放
F1.8レンズの開放
 絞りが出ているF2開放の描写は絞り全開の描写よりフレアが少ないし、周辺光量落ちも改善しているので明確な差があると判る。 また、当然ながら古い光学設計のF2レンズより新しい光学設計のF1.8レンズの方が解像感などの描写性能が向上していて、RE,Auto TOPCOR 5.8cm F1.8 に迫る描写である。 手元にあったF1.8レンズ(新型)と今回のF2レンズ(旧型)とでは製造された年代が異なるので光学設計やコーティングなどの違いによるものだろう。

玉ボケ具合比較

C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:F2開放
F2レンズの開放
C.C Auto Petri 55mm F2(旧型) 絞り:全開
F2レンズの全開
C.C Auto Petri 55mm F1.8(新型) 絞り:F1.8開放
F1.8レンズの開放
 絞りが出ているF2開放の玉ボケに対して絞り全開の玉ボケの方がボケサイズが大きい事が判る。 また、距離環を至近端(約0.6m)に設定してあるけどF2レンズの玉ボケとF1.8レンズの玉ボケの大きさが違う事判る。 これはヘリコイドの∞→至近端回転角が違うのと、距離環に書いてある指標があてにならないためである。 中間域の玉ボケ具合は何となくF1.8レンズよりF2レンズの方が勝っている気がするけど、玉ボケの雰囲気は似た様なものだ。 同世代レンズでも鏡筒の仕様が変遷しているので比較は難しいかもしれない。

結論

C.C Auto Petri 55mm F2 レンズ構成(新旧どちらか不明)
レンズ構成
 C.C Auto Petri 55mm F2 と C.C Auto Petri 55mm F1.8 とは多分同じ光学系で、F2レンズは開放F値をF2に制限しているだけという巷の噂は事実だと確認できた。 販売価格を下げるためにほぼ同じレンズなのにセット価格は随分と安く設定されていた。 おそらく、管理原価は C.C Auto Petri 55mm F1.8 と変わらないハズで、カメラとのセット価格を安く設定するための戦術製品だったのだろう。
 なお、「多分」と表現したのはレンズの製造年代が同じF1.8レンズとF2レンズとを持っていないので明確に断定できないためである。 旧型の 55mm F2 と新型の 55mm F1.8 とでは各レンズ面の反射が異なるし、当然だけど描写性能が高いのは新型の方である。 ちなみに、もし中古の C.C Auto Petri 55mm F2 や F1.8 を買うのであれば描写性能が向上している新型をお勧めする。

あとがき

 今回の C.C Auto Petri 55mm F2 レンズはTTL開放測光方式のカメラであれば開放値が間違っているので露出に影響してしまうけど、PETRI V6 にはTTL露出計すら搭載されていなかったし PETRI FT は絞り込み測光だったのでメーカーとして悩むことは無かっただろう。 なお、新型の C.C Auto Petri 55mm F2 ではファインダー像もF2になる様に絞り羽根付近に光量制限リングが設けられた。 さらに、F1.7レンズは有効径が異なるだけでF1.8と同一光学設計らしいので、55mm F2とF1.8とF1.7は全て同じ光学系という事になる。
 ちなみに、その後の EE Auto C.C Petri レンズでは開放測光用の開放F値ピンが設けられたけど、F2レンズもF1.8レンズもF1.7レンズも全部同じ設定(開放値ピンが無い)なので、露出精度はかなりアバウトな設計だったと言える。

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