ITY-430 UV Cut Filter | ITY-430 UVカットフィルター

EOS-1DmkⅡ ZUIKO 100/2 F:2 Tv:1/15 ISO:800 WB:AWB 2006/02/12 No Filter




色収差対策 ★ ITY-430フィルタによる色収差軽減実験 ★

 ここ暫の間は撮影レンズの色収差を除去・軽減する方法に取り組んでいました。 今回、五鈴精工硝子㈱様のご好意により、430nm以下のUV(紫外線)シャープカットフィルターであるITY-430を提供して頂いたので、テスト撮影結果を報告としてまとめてみました。
結論は...とってもGoodですよ! 写真用品として発売して貰えたら助かりますネ。


なぜ近紫外域カットが必要なのでしょうか?

光学硝子を使ったレンズには残存色収差があり、波長によって光軸上の焦点位置が異なる「軸上色収差」(axial chromatic aberration)と画面周辺部で波長の差が像倍率の違いとなって現れる 「倍率色収差」(chromatic defference of magnification)の2つがあります。
  蛍石などの超高級硝材料を使っていない交換レンズでは色収差補正が不足しているため、一般撮影ではあまり目立たない軸上色収差とか倍率色収差が夜景写真や天体写真では非常に目立ってしまいます。  その理由は背景に暗黒が多く点光源周りの色にじみが際立ってしまうからです。
  色収差は短波長側で急激に増加する傾向があるのと、デジタル一眼レフでは青感度が高い事から“青ハロ”などとして表れてしまいます。  これまでは一般に入手出来るシートフィルタ等を用いて軽減実験を行っていましたが、それらの撮影結果は以下の様な感じで満足出来るものではありません。
  • 420nm以下の波長をカットするSC-42では効果が少なく、よほど酷い色収差発生レンズを“見られる程度”に改善出来るレベルなのと、平面性が良くないので光学性能が低下してしまう。 
  • 銀塩モノクロ時代に入手出来た440nm以下の波長をカットするY-44(Y-1)フィルタでは色バランスの崩れが大きく、常用するフィルタにはならない。  (中古でもなかなか入手出来ないのと、当時のコーティングは反射が多い) 
  • 画像処理にて色収差を目立たなくする事は可能だが、実際の写真とは異なる仕上がりとなり“塗り絵的”になってしまうので、写真家にとっては気にいらない。 
  • 色収差除去フィルタも発売されているが、かなり高価である/フィルタサイズが選べない/入射角依存があり望遠専用 などの理由により、ちょっと手を出せない。 

ITY-430フィルタの分光特性

五鈴精工硝子㈱様にITY-430フィルタをφ48mmとφ72mmのフィルタ枠に入れられる様に加工して頂き、写真レンズや望遠鏡に装着して比較撮影出来る様に準備しました。  実際の撮影に先立って Y-44 と ITY-430 の各フィルタの色付き具合を比較してみたが、Y-44 は明らかに“黄色フィルタ”であり、かなり色バランスが狂ってしまいます。  一方、ITY-430 は色付きが少なく写真の色バランスを崩す事は無い様でした。
  また、五鈴精工硝子㈱様のホームページに掲載されているITY-430の分光透過率特性は下図の様にシャープカットフィルタとして申し分ないもので、 入射角依存が少ない事から広角レンズへの応用も可能であろう。
ITY-430フィルタの分光特性


ITY-430フィルタによる色収差軽減効果(写真撮影) 

実写結果は思惑通りで、色バランスを大きく崩す事無く色収差軽減に効果が有りました。 430nmより短い波長を多く含んだ水銀灯照明などでは画像のコントラストも向上し、 レンズ性能が1ランク上がった感じになります。
 夜景写真は EOSViewerUtility を使って現像処理した画像で、天体写真は天文ソフトである StellaImage5 による画像処理を施しバックグラウンドの色を出来るだけ揃えてあります。
何れの撮影状況で使っても、昔は素晴らしいと感じていたレンズを蘇らせる“銘レンズ蘇生フィルタ”といった感じですね。
 なお、一般写真の順光条件では殆ど差が判りませんが、逆光条件で画面隅に小枝や建造物の鉄骨などがある場合に影部分に発生する倍率色収差を随分と抑えてくれます。


夜景撮影における比較写真

銀塩時代の銘レンズを用いて、近所の二子多摩川駅を撮影してみました。 ITY-430を装着していない場合は蛍光灯などの周りに青フレアが多く現れていますが、 ITY-430を装着する事でかなり軽減されている事がわかります。 EOS-1DmkⅡは短波長側の光にも良く感じるため、レンズの色収差によるフレアが目立ちます。
  EOS 20DaとEOS-1DmkⅡを比較すると、1DmkⅡの青フレアが紫っぽくなっているのはカメラの分光感度特性差の様ですが、とにかくEOS-1DmkⅡには効果絶大です。  Planer 100mm/F2を物理的に装着出来ないのが惜しいのですが、安心して各レンズの開放絞りが使えますし、銀塩時代の銘レンズがEOSで蘇ります。

 CAMERA:EOS-1DmkⅡ LENS:ZUIKO 100/2開放 Tv:1/15 ISO:800 WB:AWB 川崎市

フィルターなし
ITY-430装着


天体撮影における比較写真

安価で解像力のあるマクロレンズを用いて、オリオン座の馬頭星雲を中心に撮影してみました。 ITY-430を装着していない場合は若くて青い輝星の周りに青フレアが多く現れ、 写真全体が青っぽく感じられますが、ITY-430を装着する事でより正確な感じに仕上がっています。 今回使用した SIGMA 105mm MACRO はとても優秀で、青フレアも少ないレンズす。
 また、天体写真ではHα輝線波長の感度が高いEOS 20Daを用いますが、EOS 20D以降のEOSカメラは短波長側を絶妙にカットしているため、青フレアは酷くはありません。 

CAMERA:EOS 20Da LENS:SIGMA 105/2.8開放 Tv:4分 ISO:800 伊豆峠付近
フィルターなし
ITY-430装着


ITY-430フィルタによる色収差軽減効果(眼視観測)

写真撮影結果に気を良くして、天体望遠鏡による眼視観測を行ってみました。 使用する鏡筒はVixenED115Sで、EDガラスを使っているため色収差は少ないのですが、高倍率での観測では 若干ですが青ハロが気になり、性能的に蛍石には及ばない望遠鏡です。
 結果は青ハロが“若干少なく感じられる”程度で、眼視での効果は少ないと思います。 ただし、肉眼の分光感度や感色特性は個人差があるのと、一般に明所ではHαの赤外側にも感度を示しますが450nm以下の短波長には感じない事から、 明るい月面観測では効果が無く、視野が暗い星野観測では効果が出てくると思われます。

肉眼の比視感度特性

 人間の眼は明所で働く錐体細胞と暗所で働く桿体細胞で構成されていて、これらの細胞のうちどちらで感じているかによって分光感度が違うと言う事です。 当然両細胞とも働く輝度がありますし、暗視順応しているかどうかでも 違うのだと思います。 また、桿体細胞は色認識能力が低く白黒風になってしまうため、青フレアがあったとしても青とは感じにくい様です。 

Sponsored Link
Sponsored Link
Sponsored Link