CANON Serenar 50mm F1.9 - ダブルガウス型の可能性

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CANON SERENAR f:1.9 50mm L39 沈胴(カメラは Canon II S改)
CANON SERENAR f:1.9 50mm L39 沈胴
 この頃の日本のレンジファインダーカメラは「ライカに追い付け追い越せ」な時代だった。 交換レンズも同様で、光学技術はドイツ勢に遅れをとっていた。

CANON SERENAR f:1.9 50mm L39 沈胴 - 1949年発売

 ライカは1933年に沈胴式の Summar f=5cm 1:2 を製品化されていたが、キヤノンは1947年に沈胴式の SERENAR f:2 50mm を「やっと」製品化し、1949年にはF2を超える明るさの SERENAR f:1.9 50mm を投入した。

レンズ構成

CANON SERENAR f:1.9 50mm L39 沈胴 Type-1/Type-2 レンズ構成
レンズ構成
 ライカの Summar と同様の4群6枚構成のダブルガウス型である。 どうやら SERENAR f:1.9 50mm には初期に製造された Type-1 と、後期に製造された Type-2 があるらしく、僕の2本ある個体は両方とも Type-2 だと思われる。 分解すれば簡単に判るだろうけど、両レンズ共にレンズ面が綺麗なので分解していない。 なお、レンズ構成図はこんな感じだったらしい...という想像に近い図です。
 Type-1 の重量が230gだったそうで、Type-2 は軽量化されたらしいのだけど、僕の個体は209gだったので、やはり Type-2 の様に思える。 また、Type-1 はメートル表記だったらしいけど、僕の個体はフィート表記になっているので Type-2 の可能性が高い。

 鏡筒は SERENAR f:2 50mm と同様に沈胴式で、美しいメッキ仕上げの鏡筒だけど、銀ピカ面の黒刻印文字は視認し難いのが難点だ。 ヘリコイドは直進式で、鏡筒先端部が回転しないので、絞り環の操作性は良い。 最短撮影距離は3.5feet(1m)で、当時のレンジファインダーカメラ用交換レンズの標準距離である。

 絞り環は不等間隔で、梨地面にF1.9からF11までの刻印(梨地面なので視認し易い)があり、クリックの無い絞り環になっている。 小絞りがF11までしか刻印されていなくて妙だけど、絞り環はF11を超えて少し回すことが可能で、突き当てるとF16相当になる。 恐らく、F16を刻印するには間隔が狭すぎたのだろう。 なお、絞り羽根は15枚もあり、絞っても綺麗な円形が保たれる。

差込み式の角型フードを装着(左は専用フードケース)
フード装着
 フードは差込み式の角型フードが用意(基部交換で SERENAR f:3.5 35mm と共用)されていて、装着するとフードの方が目立つほど立派(カメラファインダーの視野を邪魔しない様に裏面に窓が開いている)で、クラシック然としたものだ。 なお、この角型フードはフード基部と四角い傘部とに分かれていて、その間に SERIES VI フィルターを挿入できる様になっている。 ただし、この角型フードはレンズ先端にキツく差し込むだけの装着方式なので、落としたり装着角度がズレたりする不安があり、円筒形のフードを使った方が安心だ。

コラム  「出荷を控えた SERENAR f:2 50mm の検査時に、飛び抜けて性能が高い製品があり、調べてみると一部のレンズ硝材を間違えていたらしい。 これにより更なる大口径化の開発をスタートさせた」という逸話を、何かの記事で読んだことがある。 逸話だとは言え、いくら何でもウソ臭い。 それが本当なら設計者は余程のポンコツだったという事になる。
 キヤノンは伊藤宏氏を中心にダブルガウス型のコマ収差補正を研究し、優れたレンズを製品化したのは紛れもない事実で、伊藤宏氏は1980年に紫綬褒章を授かっている。 それにしても、キヤノンカメラミュージアムには SERENAR f:1.9 50mm の Type-1/2 の記述がない。 古い資料を大事にしないので、記録が残ってないのかもしれないけど、Type-1/2は謎だなぁ...

描写特性

 今回は TECHART LM-EA7 を介して SONY ILCE-9 にて、オートフォーカスも使用して撮影してみた。 Leitz GmbH Wetzlar Summicron f=5cm 1:2 沈胴 と同様に画面周辺でもオートフォーカスが可能で、速くないけど、マニュアルフォーカスより確実にピントを合わせられる印象だった。 恐らく、射出瞳距離や瞳径などがオートフォーカス可能な範囲内なのだろう。

遠景描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F4
絞り:F4
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F8
絞り:F8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F11
絞り:F11
 絞り開放の画面中央付近はフレアっぽいけど悪くない描写で、画面周辺にゆくほどフレアが多くなり、画面隅ではボヤけてしまう。 F2.8に絞ると、画面中央付近はスッキリとした良い描写になるけど、画面周辺がら隅にかけてはまだフレアが多い。 F4に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写になり、画面隅は我慢出来そうな描写になる。 F5.6まで絞れば画面隅でも良い描写になり、F8なら画面全域で素晴らしい描写になる。 なお、穏やかな周辺光量落ちがあるけど、光量は比較的豊富で、F4でほぼ解消される。

一般撮影

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオートに設定して現像してあります。 なお、記載の絞り値は撮影時の記憶に頼っているので、間違っているかも知れません。m(_ _)m
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F4
絞り:F4
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F8
絞り:F8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F4
絞り:F4
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F4
絞り:F4
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F4
絞り:F4
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F1.9
絞り:F1.9
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON SERENAR f:1.9 50mm  L39 沈胴 絞り:F8
絞り:F8
 絞り開放では画面中央は少しソフトな描写で、画面周辺に行くほど収差フレアーが多くなってボヤけるので、画面周辺でのピント合わせは難儀する。 遠景ならF8まで絞れば画面隅でも満足できる描写になる。 一方、立体的な被写体の場合は、被写体を画面周辺に配置しなければ、F2.8に絞れば驚くほど良い描写で写る。 更に、F4からF5.6まで絞れば77年前のレンズとは思えない素晴らしい描写を見せてくれる。

 後ボケは二線ボケの傾向があって、少しクセのあるボケ味を示し、特に画面周辺の背景に多数の小さな輝点があるシーンではぐるぐるボケになり易い。 

 画面内に太陽を入れれば簡単にゴーストを出せるけど、「エモい」フレアーを出すのは結構難しい。 フードを外してフレアーが出る位置を探せば発生させられるけど、強烈には発生しないので、フレアーを出しにくいオールドレンズだ。

 絞り開放では画面周辺がボヤけたり、オールドレンズらしい妖艶なクセのある描写を楽しめるし、絞ればシャープな描写も楽しめる二面性があるレンズだ。 出来れば Type-1 を試してみたいけど、見かけた事がない...というか、判別が出来ない。

あとがき

 レンズ構成的にはライカの Summar f=5cm 1:2 対抗レンズだとは思うけど、時代的には Summitar f=5cm 1:2 への対応レンズだろう。 Summar や Summitar で撮影した事は無いけど、それらの後継玉で複雑な構成になった Summicron の描写と比べると、SERENAR f:1.9 50mm はなかなかの描写性能だと思う。 絞り開放の画面中央付近は Summicron に負けるけど、画面周辺から隅にかけては SERENAR の方が断然良いし、少し絞れば画面全域で Summicron より素晴らしい描写だと思う。 ダブルガウス型の可能性を感じられるレンズである。

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