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| Canon Dial 35-2 |
独特なデザインのハーフサイズカメラで、測光用CdSセンサーへ光を届けるASA感度設定用開口窓レンズを円周上に10個並べてある。 ダイヤル式電話機の様な容姿から Dial 35 と命名された。
Canon Dial 35-2
1963年に発売された初代 Dial 35 の改良機で、当時はゼンマイにより巻き上げるコンパクトカメラが各社から発売されていた。 ゼンマイ巻き上げ機能1938年発売の LEICA Ⅲb 用アクセサリーとして LEICA MOOLY が存在していたので目新しい機能ではない。
カメラの特徴
Dial 35 の特徴は
- スプリングモーターによるフィルムの自動巻き上げ・自動巻き戻し
- 測光・露出制御はシャッタースピード優先式EE
マニュアル露出も可能
(EEとはElectric Eyeの略で、光電池を使った自動露出機構を指す言葉である) - レンズは3群5枚構成の SE 28mm F2.8(フルサイズ換算で40mm)
- スプリングモーター部を構成するグリップホールド
- ピント合わせはゾーンフォーカス式
ファインダー視野内に近・中・遠のアイコンあり - フィルム装填後にスプリングチャージ操作でフィルムを1駒目まで送る空送り機構
などで、本機 Dial 35-2 での改良点は
- 露出計用の電池をMP型からHD型の1.3V水銀電池へ変更
- フィルム感度の使用域がASA10~1000(旧型はASA8~500)に拡大
- スプリング容量の増加により巻き上げ能力向上
- グリップ部にハンドストラップを追加
- アクセサリーシューをホットシューに変更
- 前面ネームプレート意匠の変更
などである。
なお、通常は自社の製品に他社名は記載しないものだけれど、鏡筒(シャッターリング)に「SEIKOSHA」と記載されている。 「SEIKOSHA」と記載する事で、シャッターユニットを安価に納入して貰う契約でもあったのだろうか? 「LEICA」とか「ZEISS」だったらお金を払って記載させて貰うブランド名だったりする。
使い方
ファインダー視野
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| ファインダー視野 |
カメラ右上に光学ファインダーがあり、ブライトフレームで28mm(フルサイズ換算で40mm)の視野が判る。 左側には 山岳景色(無限遠)3人家族(3m)バストアップ(1m)の3種類のピクトグラムがあり、ピント操作に連動してブライトフレーム上の黒い指針が上下する。 下側には絞りスケールがあり、左右に変化する黒いメーター指針により使用される絞り値が示される。 パララックスの自動補正は無いが、至近撮影距離では上方の細枠が画面上限になる事を示している。 見易くて良いファインダーだと思うけど、設定してあるシャッター速度も表示されれば嬉しかった。
電池装填
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| 電池の装填 |
1.3VのHD型水銀電池を1個装填するけと、現代では電池アタプターを使ってLR-44銀電池が使える。 カメラの背蓋を開け、カメラの可動式マイナス極アームを退避させてから、プラス極であるアダプター底面を下にしてカメラに装填するが、カメラ側のくわえ込み式接点が意外とキツイ。 電池をキチンと嵌めてから、退避させたカメラのマイナス極アームを電池中央に戻せば電池の装填は完了である。 電池は背蓋を開けないと交換できないので、フィルムを装填した後に電池電圧が低下していたら、暗箱の中で手探りでフィルムを抜かなければならなくなる。
フィルム装填
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| フィルムの装填 |
フィルムの装填は通常のカメラと同じで、巻き上げスプロケットの溝にフィルム先端を差し込んで、ハンドグリップを少し回して正しく装填されてフィルムが送られることを確認したら背蓋を締める。 背蓋を閉めたらハンドグリップをぐりぐり回せばフィルムが1駒目まで空送りされてフィルム送りだけが自動的に止まっている。
フィルムカウンターはレリーズボタン上方にあり、順算式で1駒撮影ごとにカウントアップされる。 なお、背蓋はロックなしのレバーをスライドすれば開くので、不用意にレバーを弄ると撮影済みフィルムをダメにしてしまうので注意しよう。
ゼンマイのチャージ
フィルムの空送りが済んで1駒目に達するとハンドグリップの負荷が多少変わるけど、その後はゼンマイのチャージに切り換わるので、そのままぐりぐり回してゼンマイを最後までチャージする。 完全にチャージした状態でも72駒は撮影出来ないので、フィルムを使い切るまでに数回のゼンマイチャージが必要になる。 初期型よりゼンマイ容量を増したらしいけど、大幅な改良ではなかった様だ。 なお、フィルム未装てんの状態だとゼンマイがチャージされない仕組みなので、シャッターもチャージされていない(場合によってはシャッターがチャージ済みの事もある)のでレリーズが出来ない。
フィルム巻き戻し
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| 巻き戻しボタン |
36枚撮りフィルムなら72駒撮影でき、72駒まで撮影すると次駒には自動給送されないでストップする。 カメラ右下にある巻き戻しボタンを時計回りにひねってから押せば、ゼンマイの力で巻き戻しが開始される。 なお、巻き戻し中はボタンを押し続ける必要がある。 ゼンマイの残力が無い場合はゼンマイをチャージし、再び巻き戻しボタンを押せば再開される。 ゼンマイを完全にチャージしてもフィルムを全て巻き戻すことは出来ないので、追加チャージは必ず必要だ。
ASA感度設定
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| ASA感度設定 |
電話のダイヤル状に並んだ窓の開口面積が各ASA感度に対応していて、フィルム感度に合う窓を選択して指標に合わせる。 ダイアル窓の内側にある透明なギザギザ部を押さえて回せばASA感度ダイアルが回せます。 ただし、フィルム感度用の窓は7個(3個はダミー)しかないので、フィルムのASA感度は「範囲」として設定する。 例えばASA100のフィルムならASA80~125の窓を選択するので、使用フィルムの感度によっては若干の設定バラつきになるけど、ネガフィルムを使う限り目くじらを立てる必要は無い。 なお、初代よりASA感度の「範囲」を少し広げて(誤差を大きくして)ASA感度設定域を広げている。
それから、フィルター(Φ48mm)を装着するとASA感度設定が出来ないので、異なる感度のフィルムを使う場合は一旦フィルターを外す必要がある。
撮影操作
右手でブリップを握り、親指でカメラ背面を押さえつつ、人差し指でカメラ前面のレリーズボタンを押せば撮影される。 レリーズボタンを放せばゼンマイによりフィルムが一齣分送られる。 グリップを握って手持ち撮影するのが基本だけど、グリップ底部に三脚ネジ穴があるので、三脚に据える事も可能だ。 残念ながらセルフタイマーが無いので集合写真では誰かが撮影役になるし、最長1/30秒のシャッターなので夜景なども撮影できない。 そもそもグリップ部がぐるぐる回るので、三脚に据えても本体が安定しない。
シャッター速度選択
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| シャッター速度選択 |
本体から1cmほど出っ張った鏡筒部がシャッター速度リングにもなっていて、1/30秒・1/60秒・1/125秒・1/250秒の4段階を選択できる。 EE機能により絞りは自動調節されるけど、適正範囲外になる場合や、積極的に指定絞り値を使いたい場合にシャッター速度を変更する。 ただし、低速側は1/30秒止まりなので、低輝度環境での撮影にはストロボが必要になる。 また、低速シャッターが必要な夜景などは絶望的だ。
ピント調節
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| ピント調節 |
鏡筒上部にピント調節レバーがあり、目測の撮影距離をネームプレートに記載の距離目盛に合わせる。 ピント調節の範囲は無限遠から0.8mまでである。 また、ファインダー内に 山岳景色(無限遠)3人家族(3m)バストアップ(1m)の3種類のピクトグラムがあり、ファインダーを覗いたまま大雑把に設定する事も出来る。 28mmとはいえフルサイズ換算で40mmだし、明るくは無いけどF2.8なので、テキトー過ぎるとピンボケ写真になる。 シャッター速度をあまり上げない方が絞り込まれるので、少しはピンボケを減らせるだろう。 絞りが開放になる場合は被写体距離を慎重に選んだ方が良い。
マニュアル露出
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| 絞り設定ツマミ |
ファインダー下部にF2.8からF22までの絞りスケールがあり、通常はEE機能によりメーター指針で示される絞り値で露光される。 カメラ前面のファインダー下に絞り操作ツマミがあり、このツマミを引き上げる事でメーター指針がツマミにメカ的に連動するようになり、任意の絞りを選択可能になる。 ツマミを回せばF2.8~F22のあいだで絞り値を無段階に選択できる。
ただし、測光結果が判らなくなるので、EE状態でメーターが指す絞り値を確認してからマニュアルで所望の絞り値に設定するのが良いだろう。 例えば、逆光の場合にメーターが指す絞り値より1~2段絞りを開ければ逆光補正が可能だ。
また、ストロボを使う場合は自動調光ストロボの想定絞り値にする必要があるので、カメラの絞りをストロボの想定絞り値に合わせれば良い。 自動調光機能の無いストロボの場合は、ストロボのガイドナンバーと撮影距離に応じて絞り値(絞り値 = ガイドナンバー / 被写体距離)を設定する必要がある。 ちなみに、ここでは「絞り操作ツマミ」としたが、説明書では「オート・フラッシュ切換えボタン」と呼ばれている。
注意点
電源スイッチは無いので、CdSに光が当たれば電流がチョロチョロと流れ続ける。 なので、レンズキャップ付けておけば電池の消耗も防げるので安心だ。 また、電池の液漏れを防ぐために、カメラを使わない時は忘れずに電池を抜いておいた方が良い。 カメラをしまう時は電池を抜いてグリップ部分だけが出る専用ケースに入れてガビ防止対策を施して保管しよう。
あとがき
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| 角目ローレットになった |
この個体はフィルム送りが故障したので、大昔に関東カメラサービス(川崎・堤根の自社ビルで元気に活動していた頃)で修理して貰った。 その際、劣化して無くなっていたハンドグリップ部のゴムも付けてくれたけど、オリジナルの縦目ローレットではなく角目ローレットになっていた。 折角、関東カメサさんが処置してくれたけど、そのうちオリジナルに近い縦目ローレットに変更してあげようと思う。
話は変わるけど、この時代のキヤノン製品には「キヤノネット」とか「キヤノーラ」などの製品名が付けられる事があった。 時代が進むと社名利用基準が見直され、キヤノンと語呂を掛けた様な製品名はご法度となった。 本製品が「キヤノダイアル」だったりしたらご法度製品になるところだった。
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