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| POLAROID SX-70 LAND CAMERA FIRST(左)と ALPHA 1(右) |
かなり前に
POLAROID SX-70 の人気が再燃した事があった。 それ以上に富士フィルムの Instax が流行ったけど、そんな最新インスタントカメラは持っていないので、
POLAROID SX-70 を引っ張り出してみた。 このカメラはミラーを使った軸外し光学系になっていて、カメラを斜めに構えるスタイルだ。 常人が考え付くアイデアではないと驚いたものだ。
このシステムで撮るとレトロ然とした
ぬる~い写真が得られる...というか、レトロなのだ。 写真を撮る道具としてはシャープで綺麗に撮れる最近のインスタントカメラの方がイイに決まっているけど、
POLAROID SX-70 の最近の人気はレトロファッションを楽しむアイテムなんだと思う。
POLAROID SX-70 LAND CAMERA
POLAROID SX-70 は1972年に米国のポラロイド社が発売したカートリッジフィルムを使用した初めてのインスタントカメラで、ポラロイドカメラの元祖モデルといえる。 また、インスタント写真の普及に貢献した歴史的カメラでもある。 開発コードネームは魔法よろしく「アラジン」で、今でも高い人気を誇るカメラだった。(便宜上 SX-70 FIRST と呼ぶ)
それなりに大きくて重いけど、画面サイズ的にはモータードライブ付きの中版一眼レフと言えるし、鑑賞用印画紙が入っていると思えば充分にコンパクトだ。 カメラ自体は折り畳み式一眼レフ構造で、電子制御によるAE露出やモーターによるミラー駆動とフィルム吐出駆動が行われる。 フォーカスはマニュアルで、無限遠から25cmまでのピント調節が可能である。 なお、POLAROID SX-70 ALPHA 1 はマイナーチェンジ機として1977年に発売された。
さて、何故「LAND CAMERA」なのかというと、ポラロイド社の共同創業者である Edwin Land 氏が手掛けたインスタント写真用カメラなので、彼の名前を冠したカメラ名となったのだ。 ただし、1982年に Edwin Land が退社してからは「LAND CAMERA」という名称は消えている。 多分、円満退社という訳ではなかったのだろう。
SX-70 FIRST と SX-70 ALPHA 1 の違い
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| ALPHA 1 との違い |
SX-70 FIRST ではストラップを使いたいならケースに入れなければならなかったり、三脚を使いたいなら三脚アダプター付けなきゃならなかったりと不便だった。 そこで、1977年に発売された SX-70 ALPHA 1 は SX-70 FIRST のデザイン・機能はそのままにストラップホルダーと三脚ネジ穴が追加されたモデルである。 こんなのは最初から付けるべきだったし、SX-70 FIRST から5年後のマイナーチェンジは遅すぎる。
また、細かなところではレンズ周り印刷された単なる放射状の線が距離情報に変更され、よりカメラらしくなっている....活用する人はあまり居ないだろうけど。 内部の電気回路なども修正されているだろうけど、分解していないので詳しくは判らない。
SX-70 の撮影手順
多分、SX-70 を初めて手にした人は、どうやって撮影するのか判らないだろう。 そこで、撮影手順だけは記載しておく。
- 先ずは折り畳まれたカメラのファインダー部左右をつまんで、『グイッ』と持ち上げる。 カメラ左側のアーム(説明書では支えA)が『カチッ』と鳴ってロックされるまで持ち上げるのが作法で、壊れるそうな不安を感じるけど...大丈夫、壊れません。 でも、精密機器感が全くないのはご愛敬だ。
- カメラ右側の黄色ボタンを押して前蓋をダウンさせるとフィルムパックを入れられます。 既に空のフィルムパックが入っている場合は白いベロを引っ張って取り出します。
- フィルムパックの遮光紙側を上に向けて、奥までしっかり入れる。 ローラーが付いた前蓋がロックされるまで元に戻します。
- 前蓋を戻すと『ばっこん、じぃ~』と派手な音と共に、フィルム排出スリットから遮光紙が排出されて撮影準備完了となる。 撮影後に空のフィルムパックを動作確認様に使うのであれば遮光紙は捨てないで取っておこう。
- カメラを撮りたい物に向け、ファインダーでピント調節・構図確認をしてから前面の赤いレリーズボタンを押し込む。 説明書によると右手親指をレリーズボタンの後ろ側に置き、人差し指と親指でレリーズボタンを「摘まむ」様にするのが基本作法だ。
- レリーズボタンを押せば『ばっこん』と派手な音でミラーが駆動・撮影され、『じぃ~』という派手な音と共に撮影されたフィルム(印画紙)が排出されます。
なお、レリーズボタンはフィルムが排出される前に離しても良いが、フィルムが排出される前に再度レリーズボタンを押すと露光を中断してフィルムが排出されてしまう。
ちなみに、三脚に据えて夜景を撮影する様な場合はレリーズボタン脇のレリーズソケットに専用ケーブルレリーズを挿してレリーズした方が良いだろう。
最高シャッター速度は判らないけど、僕の ALPHA 1 カメラでは最長シャッター速度は25秒だった。 レンズがF8固定なので室内ではスローシャッターになり、フラッシュが無ければブレブレ写真になるだろう。
- 排出された撮影済みフィルムを抜いて、暫く待つと画像が現像されて現れて来る。
排出されたフィルム面に光を当てると現像に影響するので、現像が終わるまで(少なくとも数分間)は光を当てない方が良い。 なお、現像時間は環境温度によって変わる。
- カメラを畳むときはロックアーム(説明書では支えA)を矢印方向に押せばロック解除され、カメラを畳める様になります。
- カメラ本体の三角屋根とファインダーを『カチッ』と鳴るまで押し込めばフラットになって収納完了です。 なお、カメラを折り畳んだら露出補正ダイヤルはゼロ位置に自動的に戻っています。
『ぱっこん』の時には手に振動が伝わるので、最近のデジカメやスマホと違って❝カメラで写真を撮った感❞を堪能できる。
撮影の注意点としては、ファインダーを覗く角度とカメラ本体の角度とが大きく異なっている点で、初めてファインダーを覗く際には面食らう。 また、スプリットイメージがあるけど、ファインダー中央ではなく下寄りにあるので、スプリットイメージ部を中央にして撮影すると随分と上が空いた写真になってしまう。
Polaroid SX-70 Film
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| Polaroid SX-70 Film |
Polaroid SX-70 は8枚撮りのフィルムパックには電池が内蔵されていて、フィルムパックを入れないとカメラの動作確認すらできない。 使い終わったフィルムパックには充分な電力が残っているので、動作確認用として遮光紙と共に保管しておいた方が良いだろう。
ネットで調べてみると、ちゃんとポラロイドフィルムも売っているので、カラーとモノクロをポチって試してみた。 実際には「互換フィルム」というべきなんだろうけど、一応でも存在する事には驚いた。 SX-70 の人気が再燃したからなのだろう。
専用フラッシュバルブ
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| 専用フラッシュバルブ |
SX-70 用のストロボも存在した気がするけど、一般に専用フラッシュバルブを利用していたと思う。 10発アレイになっていて、レンズ上部のフラッシュソケットに差し込んで使用する。 フラッシュバルブは5発づつ前後に配置されているので、5発使ったら向きを変えて指し直して使用する。 今となっては貴重な新品純正フラッシュバルブなので、このままコレクションしておこう。 確かストロボも発売されていたと記憶している。
SX-70の清掃とリペア
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| SX-70 の光学配置 |
Polaroid SX-70 は一眼レフカメラとして大変凝った光学的配置になっていて、ファインダー時でも撮影時でもミラーを用いて結像させている。 ファインダー時は軸を外した凹面鏡で再決像させる事で上下左右正像を観察できる。
左の図はファインダー観察状態で、フィルム面とほぼ同等の位置に大きなピントスクリーンがあって、ファインダー側からこのスクリーンを観察する。
撮影時はフィルム面を覆っている大きなピントスクリーンが跳ね上がり、その裏面にあるミラーによりフィルム面に像を結ぶのである。 なので、各ミラーの劣化やスクリーンの汚れはファインダーの観えに影響するし、撮影用ミラーの劣化・汚れは写真の仕上がりに影響する。 困ったことに、ブロアーなどでミラーやスクリーンのゴミなどを吹き飛ばすのは無理なので、ばらばらに分解しないと清掃すら出来ない構造になっている。 もっと暇になったら分解・清掃・改造を施してみようと思います。
レンズの清掃
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| 少しカビがあるレンズ |
Polaroid SX-70 のレンズは4枚構成で 116mm F8 という仕様らしく、縦横比が異なるけど135カメラ換算なら約45mmの標準レンズに相当する。 なお、アクセサリも入れられる専用バッグに入れたままだったり、押し入れに保管したままだったりするとレンズにカビが発生しやすい。
このカメラのレンズコーティングは強度が低いようで、カビが生えてしまうとダメージが大きいようで、清掃・補修が難しい。 試してみたけど、レンズのカビ取りを行ってもカビ痕がしっかり残ってしまう。
酢でメッキのリペア(都市伝説)
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| 「酢」は全く効果なし |
Polaroid SX-70 の外観は金属っぽくなっているけど、実際にはプラスチックにメッキを施したものである。 プラスチックメッキの錆や劣化は「酢を付けて擦れば回復する」というのを見た事があったのでやってみた。
結果は...殆ど回復しませんでした。 ごく浅い錆・劣化であれば少しは綺麗になりますが、黒穴みたいに深い錆・劣化は回復しませんでした。 都市伝説...なのかも知れません。 程度が酷くなければ放っておくか、酷い劣化なら表面を研磨してからメッキ風の塗装を施した方が良さそうだ。
久しぶりの撮影
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| Dレンジが狭く、白飛び・黒潰れな写真になる |
Polaroid SX-70 のファインダーは覗き易いとは言えないけど、最短撮影距離は25cmまで近寄る事ができる。 「一眼レフ」ならではの近接撮影能力で、パーティーでのテーブルフォトでも全く問題ない。 なんせ 79x79mm(実測は77x79mm)の画面サイズはトリミング出来ないので近寄れることは正義だ。
SX-70 のカラーフィルムは彩度が低くてDレンジも狭い仕上がりで、モノクロフィルムはセピア調の仕上がりになる。 フィルムが排出される時にフィルムの端にある現像液がフィルムの排出時に押し出されてフィルム面が現像されるのだけど、今も昔も現像ムラは持病...というか、このシステムの個性である。 この個性は季節による環境温度などで変わるので、今の撮影結果がどうなるかは予想が難しい。 このムラは排出ローラーが原因だと思っていたけど、どうも排出スリットにも原因があるかも知れない。
僕の Polaroid SX-70 は First Model と Alpha 1 の2台あり、どちらもメカ動作は今でも大丈夫だけど、露出がオーバー目になってしまう。 シャッターや測光センサーが劣化している影響なのかもしれないが、露出補正しなければならない。
Polaroid SX-70には測光センサーの受光量を変化させるタイプの露出補正ダイヤルがあるので補正は可能なのだけれど、カメラの測光値が判らないの補正は❝感❞で行うか、撮ってみた結果で行うしかない。 また、撮影後にカメラを畳むと露出補正ダイヤルが自動的にゼロ位置に戻る機構が備わっていて、必ず露出補正が必要な場合はカメラを開ける(撮影準備にする)度に露出補正をし直さなければならないので面倒だ。
調べてみると、基板上のコンデンサーを交換すれば露出調整が出来るらしい。 これを応用して低感度フィルムでも高感度フィルムでも使用できるように、小型スイッチで切換えできる様にする改造サービス店があった様だ。
あとがき
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| 専用ショルダーバッグなど |
ぬる~い写真でレトロ感のある写真がイイ...とも言えるけど、ぬる~い写真しか撮れないと『なんだかなぁ』と思ってしまう。 もう少しシャープな写真も撮れたらもっと楽しめた。
結局、フィルムを2パック使ったところで SX-70 遊びにも飽きてしまった。💦 まだカラーフィルムと白黒フィルムが冷蔵庫の中に残っているけど、冷蔵庫に長期保管して「電池」は大丈夫なのかなぁ? なお、全バラリペアしようかと思っているうちに下書き記事に埋もれていて公開が遅くなったけど、この記事を書いたのは2018年頃だったと思う...結局、全バラしなかった。
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