EL NIKKOR 150mm F5.6 - 中版マクロレンズの代用

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HASSELBLAD用ベローズに装着した EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm
HASSELBLAD用ベローズに装着した EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm
 HASSELBLAD Makro-Planar T* 135/5.6 の安い中古レンズを昔から探していたけど諦めていた。 そこで、EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm をハッセルのベローズに装着出来る様にしてマクロ撮影用レンズとする事にした。 カメラは 205TCC や 2000FCW を使うので、レンズ側にシャッターが無くても問題ない。 レンズは以前に入手してあったけど、ハッセルのベローズに装着するアダプターが無くて何年も塩漬け状態だったのだ。

EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm - 1968年発売

 僕が入手した EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm は旧世代の製品で、多分1968年に発売されモデルと思われ、外箱には実測?焦点距離が149.7と記載されている。 1983年に新世代の製品へ移行した様だ。

レンズ構成

EL NIKKOR 150mm F5.6 レンズ構成
レンズ構成
 EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm は4群6枚構成のオルソメター型で、4x5in版用の引き伸ばしレンズなので中版サイズなら充分過ぎるイメージサークルがある。 開放F値が明るい訳じゃないけど、引き伸ばしレンズは広い波長域に渡って収差補正された設計のハズなので、設計上の倍率である2~8倍(撮影倍率表現なら0.5~0.125倍)の近距離撮影なら高解像の描写が期待できる。
 絞り羽根は円形絞りではないけど、12枚あるので絞っても玉ボケは円形に近そうだ。 なお、入手したレンズには座金が欠品だった(使わないけど)のが残念だ。

取付け側が Φ53mmP=0.75mm という特殊仕様
Φ53mmP=0.75mmのネジ
 このレンズを入手してから気が付いたのだけれど、取付け側(マウント側)が Φ53mmP=0.75mm という特殊仕様なので、ハッセルにマウントさせるアダプターが見当たらない。 またアタッチメント側(フィルター側)も Φ47mmP=0.5mm という特殊仕様なので、フード類の装着も悩ましい問題だ。
 もし、試そうと思う方はL39マウントを採用している新しいタイプの EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm を入手した方が取り付け易いし、グイグイと拡大撮影するなら EL NIKKOR 1:5.6 f=105mm の方が適していると思う。

HASSELBLAD V システムへの装着

3個のパーツを組み合わせてハッセルVマウントに装着
使用パーツ類
 レンズを入手した後に何年も塩漬け状態だったけど、今になって一念発起してベローズに装着させる事にした。 先ず、M53P0.75というう特殊なネジが適合するアダプターリング類をネットで探し、以下のアダプターリングを組み合わせる事にした。
  • ハッセルVマウント → M65P1.0
  • M65P1.0 → M58P0.75
  • M58P1.0 → M53P0.75
と、回りくどい3段階の組み合わせで EL NIKKOR のM53P0.75をハッセル用ベローズにマウントすることにした。
 パーツが届いてから『あっ、間違ってた!』と気付いたのは、M58P1.0とM58P0.75でピッチが異なっていたのだ。 ところがネットを探しても M58P0.75 → M53P0.75 というアダプターリングが見当たらない。 仕方ないので、買ってしまった M58P1.0→M58P0.75リング を大判レンズの締め付けリング的な使い方で無理やり使う事にした...ちょっと不安があるけど。

EL NIKKOR 150mm F5.6をベローズに装着した状態(カメラは HASSELBLAD 205TCC)
ベローズに装着
 さて、残念ながらこの構成ではベローズを最小に縮めても遠距離側でピントが合うのはは2m程度までで、無限遠にはピントが合わない。 無限遠でも使える様にするには Makro-Planar T* 135/5.6 の様に、マウント内にレンズが入り込む特殊なアダプターにする必要がある。 もっとも、EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm は無限遠を想定した設計ではない。 そのうち別の方法を考えるとして、今回はコレで善しとしよう。

 また、フィルター側は M47P0.5 → M49P0.75 という特殊なアダプターリングを見つけたので、フードやフィルターなどのアクセサリー類が装着できる様になり、リングストロボも装着出来る。 なお、引き伸ばしレンズなので、絞り環の刻印文字が普通のカメラ用レンズとは反対向きになってしまうけど、判るので問題ない。

撮影可能範囲

 EL NIKKOR 150mm F5.6 は4x5in版サイズの引き伸ばしレンズとして設計基準倍率が0.25倍(投射距離約1m)で、標準使用倍率範囲は0.125~0.5倍(投射距離約0.68~1.52m)となっている。 撮影に使用するのは6x6cm版なので、4x5in版の様な広い範囲ではない事から画面周辺の収差は気にしないので、使用倍率範囲はもっと広いと想像できる。
 今回のセットではベローズをいっぱいに伸ばすと凡そ1倍(撮影距離約0.6m)の撮影ができ、ベローズを最短にすると0.09倍(撮影距離約1.9m)の範囲で撮影でき、設計上の使用倍率範囲より広くなるけど6x6cm版なら大丈夫な気がする。 なお、色収差は380nm~700nmの波長域で補正されているらしいが、「補正」されているレベルは判らない。

デジタルによる描写(SONY ILCE-9)

 HASSELBLAD 205TCC のファインダーを通して覗いてみると、絞りを開けた状態でもシャープに映っている事がハッキリと判る...様な気がした。 ただし、絞り込むとファインダーが暗くなるので良く判らなくなる。

絞り値による特性(ILCE-9による中央描写)

 画面中央付近の描写を確認するために、ベローズの後部に HV→Y/C + Y/C→NEX と2段のマウントアダプターを介して SONY ILCE-9 を装着し、撮影倍率は約0.5倍ほど撮ってみた。 以下の画像はカメラのオートホワイトバランス設定を使い、Luminar Neo Ver 1.25.1 で現像したコチドレン(子猫の爪)の葉を撮影したの写真です。
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F5.6 SONY ILCE-9
絞り:F5.6
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F8 SONY ILCE-9
絞り:F8
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F11 SONY ILCE-9
絞り:F11
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F16 SONY ILCE-9
絞り:F16
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F22 SONY ILCE-9
絞り:F22
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F32 SONY ILCE-9
絞り:F45
 引き伸ばしレンズは立体物やピントが合っていない事は考慮していないので、ボケ味には期待していなかっけど、大きめの背景ボケは意外と素直なボケ味だと思う。 一方、小デフォーカスによる小ボケは滲む様な感じの独特なボケ味で、輝点はリング状になる。 勿論、ピントが合っている部分の解像感は素晴らしい。 なお、F11までは絞っても深度が深くなるだけだけど、F16より絞り込むと回折の影響で次第にボヤけが多くなってくる。 F45に絞って撮影すると深度は深くなるけど『どこにピントを合わせたんだっけ?』というほど回折ボケが酷くなる。
 また、絞り羽根が12枚もあるおかげで、絞っても輝点ボケに多角形感が感じられない綺麗な玉ボケが得られる。 6x6cm版の画面周辺の玉ボケも綺麗な〇型になるなら嬉しいが...

EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F8 SONY ILCE-9
ランタナの花 絞り:F8
 オートフォーカスが出来る等倍中望遠マクロレンズを持っているので、このレンズを無理して使う必要はないけど、大きさや重さなどを無視すれば、ワーキングディスタンスが取れる135フルサイズ用の接写レンズとしても使えると思う。
 なお、接写だと振れの影響が酷くなり、角度振れよりシフト振れが目立つので、カメラのボディー内ブレ補正が上手く機能しない。 また、接写状態で絞っていると随分と暗い状態なので、振れの影響を防がないとレンズの描写性能を引き出せないだろう...風の影響もあるし...

 以上のテスト撮影では6x6cm版に対して画面中央付近しか判断できないし、6x6cm版の画面周辺描写がどうなのか気なるところだ。 多分、6x6cm版の銀塩フィルムなら多少の「アラ」は和らぐ様な気がする。

フィルムによる描写(HASSELBLAD 205TCC)

 とっくの昔に期限が切れた Kodak E100 を使っているので、発色その他が妙な事になっていると想像されます。 新品フィルムはべらぼうに高価なのでご容赦願います。 なお、フィルムスキャナーではなくデジタル一眼でフィルムをデジタイズしています。

ピンクで小さな鉢植えの花

EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F11 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F11 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
 冬に咲く小さなピンクの花・カラエンコを撮影倍率約0.5倍で撮影してみた。 掲載写真はF11のものだけど合焦部の解像感は素晴らしい描写だと思う。 この手の被写体は1点にしかピントが合わないので、接写に向かないかも。

山もみじの葉

EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F16 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F16 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
 赤くなった山もみじの葉を約0.45倍で撮影してみた。 深度が欲しくてF16まで絞ったけれど、合焦している部分の解像感は素晴らしい描写だと思う。 日が傾いてからの撮影だったのでシャッター速度は1/8秒とかなり遅くなった。

孔雀の羽根

EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F11 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
EL NIKKOR 1:5.6 f=150mm 絞り:F11 HASSELBLAD 205TCC Film:Kodak E100G
 孔雀の羽根を撮影してみた。 深度はほどほどのF11ににしたけど、素晴らしい解像感だと思う。 HASSELBLAD 205TCC のTTL調光機能を使ってストロボ撮影したので発色が妙です。 LED照明にした方が良かったと思う。

 銀塩→デジタイズだと発色の善し悪しが判り難いけど、色乗りや発色は悪くない...様な気がする。 接写だとF5.6の絞り開放では深度が浅いけど、絞り値による描写性能を気にしないで所望の絞り値を使用できる。 とはいえ、F32以上に絞るとデジタル撮影の結果通り回折の影響でボヤてしまうだろう。
 接写撮影なのでベローズの蛇腹繰り出しは撮影範囲(撮影倍率)の設定に使い、フォーカスはベローズのレールによる全体移動で行う方がやり易い。 後は被写界深度を絞りでコントロールして、シャッター速度が遅めの場合はミラーアップ&セルフタイマー撮影すれば大丈夫だ。
 高解像にデジタイズすれば様々なアラが判りそうだけど、銀塩フィルムを4000x4000画素程度に取り込むなら描写特性の問題は判らない。 遠景も撮ってみたくなるけど、ハッセル用の Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T* があるのでコレで撮る必要は無い。

あとがき

正確な焦点距離は149.7mmらしい?
焦点距離は149.7mm
 HASSELBLAD用の Makro-Planar T* 135/5.6 ならベローズ利用でも自動絞り対応で無限遠から接写域まで撮影出来るので使い勝手が断然良いだろうけど、接写域なら EL NIKKOR 150mm F5.6 でも充分に使える結果だと思う。 ハッセルのベローズを活かすために手間をかけてみたけど、銀塩写真が絶滅危惧種になる前にやっておけば良かったと後悔している。 そういえば、銀塩時代に引き伸ばしに使っていた旧世代の EL NIKKOR f=50mm 1:2.8 と EL NIKKOR f=80mm 1:5.6 は何処に保管したのかなぁ...引き伸ばし機を捨てる時に一緒に捨てたかも...
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