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| レンズ構成 |
11群15枚構成のズーム比3.5倍のズームレンズで、ズーミングで全長が変化しない古典的な4群ズームレンズである。
フォーカシングは前群繰出し方式で、距離環操作でフィルター枠が回転するタイプだ。 最短撮影距離は2.5mでテレ端なら0.147倍の撮影倍率があるけど、ワイド側では全然寄り足りない。 また、特別なマクロ機能などは搭載していないので、本当に古典的な4群ズームと言える。
重量は1695gなので充分過ぎるほど重いけど、85mm 100mm 135mm 200mm 300mm の各単焦点レンズを持って行くなら軽いとも言える...屁理屈だけど。 鏡筒中央付近にフォーカス環とズーム環がある関係から、三脚座がマウント側に寄っているため、三脚に載せると随分とフロントヘビーになる。
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| レンズにストラップ |
一方、手持ち撮影では距離環・ズーム環あたりを持てば手持ち撮影でのバランスは悪くない。 ただ、距離環やズーム環を触っちゃうので不用意にズームやピントがズレてしまう事がある。 また、カメラに装着した重量物をカメラストラップでぶら下げて歩くのには不安があるので、持ち歩くなら三脚座のネジ穴を使ってストラップをレンズ側に装着した方が安心だ。
内壁が植毛タイプになっているフードが組み込まれていて、ワイド側では充分な長さでもテレ側では不足気味だけどズームレンズなので仕方ない。 欲を言えばフードを引き出した状態で「ひねれば」ロックされる構造だったら有難かった。 また、フィルターは前面に大口径の Series IX を装着する様に押さえ枠が付いていて、距離環・前枠を含めて一緒に回転する。 固定の最終第4群(リレー群)からマウント面までの空間は充分空いているので、FD 400mm 1:4.5 S.S.C. と同様の差し込み式フィルターを装備出来たのではと思う。 鏡筒デザイン的には大きな前枠から小径のマウント部へ光が収束する様なデザインで、重量と相まって重火器の様でカッコ良い。
エクステンダー対応
焦点距離を伸ばすエクステンダーに対応していて、FD 2x-A を装着すれば 170-600mm F9 として使用できるが、FD 1.4x-A は焦点距離レンジが合わないので装着すら出来ない。 New FD 85-300mm F4.5 ならマウント開口部が丸くなっているので、画質は別として FD 1.4x-A を装着出来るかも知れない。 なお、キヤノンのFDレンズ用エクステンダー(テレコンバーター)は4種類存在する。
- EXTENDER FD 2x 5群5枚構成 1975年発売 ¥29,000円
FD 300mm F2.8 S.S.C. 専用 - EXTENDER FD 2x-A 4群6枚構成 1978年発売 ¥35,000円
300mm以上、ズームはテレ側が300mm以上。(※FD 300mm F2.8 を除く) - EXTENDER FD 2x-B 5群7枚構成 1980年発売 ¥45,000円
300mm未満、ズームはテレ側が300mm未満。(※FD 300mm F2.8 を含む) - EXTENDER FD 1.4x-A 3群4枚構成 1981年発売 ¥40,000円
300mm以上のレンズ
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| CANON製エクステンダー |
という4種類で、対応するマスターレンズが判り難い。
EXTENDER FD 2x-A と EXTENDER FD 2x-B と EXTENDER FD 1.4x-A を持っているけど、殆ど使った記憶が無い。 昔はオートフォーカスも電気的な通信も無かったので、レンズに FD 2x-B を装着し、更に FD 2x-A を重ねれば、マスターレンズの焦点距離を4倍に伸ばせた。 どうしても近づけない被写体の撮影に、 画質は別としてエクステンダーの重ね付けをやっていた動物写真家も居たハズだ。
描写特性
遠景描写
以下の写真はカメラをオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして撮影したカメラJPEGです。
焦点距離:85mm
絞り開放の画面中央付近はなかなか良い描写で、画面隅は少し描写がソフトになる。 F5.6に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写で、画面隅が少しソフトだけど良い描写になる。 F8に絞ると画面隅でも素晴らしい描写となる。
焦点距離:135mm
絞り開放から画面中央付近は素晴らしい描写で、画面隅は少し描写がソフトになる。 F5.6に絞ると画面隅でも良い描写になり、F8に絞ると画面全域が素晴らしい描写になる。 なお、135mmでも糸巻型の歪曲収差が発生しているけど気になるほどではない。
焦点距離:200mm
絞り開放から画面中央付近は素晴らしい描写だけど、画面周辺ほど少し描写がソフトになる。 F5.6に絞ると画面隅でも良い描写になり、F8に絞ると画面全域が素晴らしい描写になる。 なお、200mm辺りから糸巻型の歪曲収差が気になってくるのと、画面隅の色収差を感じ始めるが目立つほどではない。
焦点距離:300mm
絞り開放の画面中央付近はなかなか良い描写だけど、画面周辺ほど描写が甘くなる。 F5.6に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写になるけど、画面隅はまだソフトな描写だ。 F8に絞ると画面隅の描写も向上するが、倍率色収差もありので描写の甘さはなかなか改善しない。 なお、300mmでは糸巻型の歪曲収差が目立ち、直線基調の被写体では気持ち悪く感じる。 また、周辺光量落ちはテレ端が最も大きい。
アプリによる画像補正
銀塩時代なら諦めてそのままの写真を使うしかなかったけど、現代ならアプリを使えばある程度の補正が可能だ。 周辺光量落ち・歪曲収差・色収差・画面周辺の画像回復などを施した画像とオリジナル画像とを比較してみた。
オリジナル画像と各種補正済の画像比較 f=300mm 絞り:F4.5
画面周辺の色収差や画像回復は縮小画像では判り難いので、画面左下をピクセル等倍で切り出して比較してみた。 画面隅の描写は酷いので画像回復は完璧じゃないけどアプリの効果は歴然だ。 でも、オールドレンズとしての風情は無くなってしまう。
オリジナル画像と各種補正済の画像比較 f=300mm 絞り:F4.5
一般描写
以下の写真はカメラをオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして撮影したカメラJPEGです。 なお、記載の焦点距離や絞り値はボケ老人の「記憶」に頼っているので間違っているかも知れません。
ちなみに、SONY 純正の Imaging Edge で現像するとカメラJPEGよりノイズが多くてシャープ感も低いのが難点で、他のRAW現像アプリを使うとしてもカメラJPEGに合わせるのが難しい。 標準設定のカメラJPEG画像を掲載するのが現実的だろうと考えました。(RAW現像するなら各種画像設定のオン・オフなどが可能で便利なんだけどねぇ)
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=135mm 絞り:F4.5 |
f=200mm 絞り:F4.5 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=85mm 絞り:F4.5 |
f=85mm 絞り:F11 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=250mm 絞り:F4.5 |
f=200mm 絞り:F4.5 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
f=250mm 絞り:F4.5 |
f=85mm 絞り:F4.5 |
f=300mm 絞り:F4.5 |
開放値がF4.5ということもあり、200mm以下の描写はなかなか優秀で隅部でなければ画面周辺に被写体を置いても問題ない。 一方、テレ側は画面周辺から隅にかけて少し流れたような描写になるので、遠景ではF8までは絞りたくなる。 ただし、立体物なら画面隅はピントから外れている事が多いので、絞り開放でもあまり気にならない。
高輝度部のボケに色が付くので違和感を感じるシーンもあるけど、汚く騒々しいボケではないし、背景を大きくボカすと案外と綺麗にボケてくれる。 また、色収差はあるけどテレ側の画面隅で倍率色収差が気になる程度で酷すぎる事は無い。 光線具合や被写体にもよるけど、驚くほどシャープに撮れることもある。
歪曲収差はワイド側では気にならないけど、テレ側では糸巻型の歪曲収差が大きいので、直線が基調の被写体だと目立ってしまう。
発色はFDレンズ群共通の派手過ぎない発色だけど、少し暖色系に寄っている。 僕の腐った眼でも判るので、FD の S.S.C. レンズとしては規格外のハズなので、経年で黄色くなったと考えられる。 だたし、デジタル一眼カメラによるオートホワイトバランスの発色は良好だ。
現代のレンズである SONY FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS なら854gだけど、本レンズの重量は2倍以上もある❝重火器❞なので、散歩に持ち出すにはデカくて重すぎる。 三脚か一脚が無いと体力的にきついけど、駅のホームでは三脚や一脚は禁止だったりするので、プルプル震えながらマニュアルフォーカスを操作して撮るしかない。 手持ちでの撮影は苦行としか思えなくなる。 ちなみに、カメラの手振れ防止をオンにしたままでは動体を追尾しにくいので、忘れずにカメラの手振れ防止をオフにしよう。
あとがき
キヤノンの85-300mmズームは1965年に FL 85-300mm F5 という9群15枚構成のレンズが発売されていた。 一眼レフが充分普及した1970年頃に、似た様なスペックのレンズとしてズーム比は少し低いけど SUPER-KOMURA ZOOM LENS 1:4.5 f=90-250mm が発売された。 テレ端の焦点距離が250mmなので、FD 85-300mm F4.5 S.S.C. より軽くて安価な製品だったので、後継の KOMURANON MACRO 925 1:4.5 f=90~250mm(通称:きゅうにぃご)などを買っちゃった一般人も少なくなかっただろう。 コムラーの「きゅうにぃご」はそれなりに写るレンズだったけど、一般人は子供の運動会が終わると無用の長物となり、押し入れの中でカビに侵される運命だった。
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