NIKKOR-H Auto 50mm F2 - 東京五輪年生まれの標準レンズ

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Nikon NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm
Nikon NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm
 NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm の発売は東京オリンピックと同じ1964年だった。 オリンピックイヤーだったので、報道向けの300mm~1200mmまでの超望遠レンズ群も発売された。 この事から50mm F2の標準レンズは華々しい超望遠レンズ群の陰であまり目立たなかったかもしれない。

NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm - 1964年発売

 このレンズは NIKKOR-S Auto 1:2 f=5cm の後継レンズで、ちゃんと銘版を確認しないと間違えそうになる...同じスペックだしね。 発売当初は銀色のフィルター枠だったけど、1972年のマルチコート化の時にフィルター枠が黒枠に変更された。

レンズ構成

レンズ構成は5群6枚のダブルガウス型
レンズ構成
 レンズ構成は4群6枚の典型的なダブルガウス型で、先代では必要だった前方凹メニスカスレンズは無くなっている。 多分、高屈折率硝材の利用などにより、典型的なダブルガウス型でもバックフォーカスが確保出来る様になったのだろう。
 この時代のダブルガウス型レンズでは Takumar 1:1.8 f=55mm や Auto-Topcor 1:1.8 f=5.8cm の様に、張り合わせレンズを分離してコマ収差を減らす変形ダブルガウス型が知られていたけど、ニコンでは貼り合わせのままだった。 ゴースト・フレアを嫌って空気と接触する面を増やしたくなかったのかも知れない。

描写特性

遠景描写

 絞り開放ではフレアっぽさはあるけど NIKKOR-S より線が細くて解像感もある。 F2.8に絞るとフレアが消えてスッキリした描写になる。 絞りF4では画面四隅でも充分な描写性能となり、F5.6なら見事な描写だ。 線が細くて解像感も素晴らしくコントラストも充分だ。 優等生的な描写といえるけど、面白みに欠けるかも知れない。 なお、周辺減光は絞りF4で判らない程度まで解消されてしまう。
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6

NIKKOR-S Auto との比較

 遠景を先代の NIKKOR-S Auto 1:2 f=5cm と比べてみた。 NIKKOR-S Auto は折角のレンズ1枚追加を本当にバックフォーカス伸長だけに利用していた様で、描写向上には役立っていない。 どうせなら『1枚多いだけあるなぁ』と唸らせる描写性能を目指して貰いたかったけど、逆に『1枚減っている方が良い』という結果だけど、光学技術の進歩で済ませて貰いたくないなぁ。 また、両レンズは画面周辺部のディストーションに差があると感じる。
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm と NIKKOR-S Auto 1:2 f=5cm との開放比較

夜景描写

 絞り開放では点光源に大き目のフレアがかかるけど淡い感じだ。 画面周辺のサジタルコマフレアもあるけどやはり淡い感じで、非点収差による点光源の放射方向への伸びは少ない。 F2.8に絞ると画面中央はスッキリするが、画面周辺ではサジタルコマフレアが少し残っている。 F4に絞ると画面四隅のコマフレアも消えて「点光源」になり、F5.6まで絞れば素晴らしい描写となる。 なお、6枚絞りなので絞り込むほど輝点にキツい6本の光芒が現れる。
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6

一般実写

 先代の NIKKOR-S Auto からレンズが1枚減っているけど、こちらの6枚構成レンズの方が周辺描写が良い。 小デフォーカスの後ボケには2線ボケの傾向が認められるので、条件によってはザワつくことがあるけど、大デフォーカスではスムースにボケてくれる。 やはり絞り開放ではコマフレアにより柔らかい描写になるけど、線が細くてそこそこの解像感があるので好感が持てる。
 ちょっと絞れば引き締まった描写になるけど、少し絞ると極小さな前ボケに2線ボケ(狛犬のあご辺り)傾向が出てしまう。 なお、6枚絞りなので絞ると六角ボケが煩わしく感じる事もある。 これは仕方ないので「六角ボケ効果」として楽しむしかない。
 発色は悪くなく若干暖色系だけど色乗りも悪くなく僕の好みの発色だ。 何となく鉛を含んだ高屈折率硝材を使った発色の様な気がする。 なお、ボケ像の周りに後ボケは緑色前ボケは紫色の色が付く場合があるけどこのレンズの「色ボケ」は少ない方だと思う。 

NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F8
絞り:F8
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F4
絞り:F4
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F4
絞り:F4
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F4
絞り:F4
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2
絞り:F2
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
NIKKOR-H Auto 1:2 f=50mm 絞り:F2.8(ヘリコイドアダプターで接写)
絞り:F2.8(接写)

 絞り開放ではちょっとフレアっぽいが、少し絞れば画面周辺まで充分な描写になる優秀なレンズだ。 あまり条件を選ばず安心して使えるけど、オールドレンズとしてはクセが少なく面白みに欠けるかなぁ。

あとがき

 1964年に発売された4群6枚構成の 50mm F2 はマルチコート化や最短撮影距離0.45m化やAi方式化などを経て、1978年発売の 50mm F1.8  へバトンタッチする事になった。 50mm F1.8 は前群張り合わせを分離した5群6枚構成の変形ダブルガウス型となり、恐らく開放のコマフレアが減って描写性能が更に良くなったに違いない。
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