一眼レフ用 ROKKOR 35mm F2.8 は1959年発売の Auto W.ROKKOR-HG 1:2.8 f=35mm が最初で、minolta SR 時代の交換レンズにまで遡る。 なお、製品名にある「MC」とは Multi Coating の略ではなく Meter Coupler の略で、絞りリングに開放測光式露出計連動カプラー爪が付いている。
レンズ構成は6群7枚のレトロフォーカス型で、テッサー型のマスターレンズの前にワイドコンバーターを配した様になっている。 コンバーターの凹群と凸群との空気間隔を長くしている古典的なレトロフォーカス型である。 古典的なレンズ構成なのでクセのある描写である事が想像される。 このレンズ構成は1959年発売の Auto W.ROKKOR-HG 1:2.8 f=35mm から同じである。 最短撮影距離は約0.4mなのでもう少し寄れたらと思う事があるが、1975年発売で5群5枚構成の MC W.ROKKOR 1:2.8 35mm で最短0.3mへ短縮された。
この時代のロッコールレンズにはレンズ構成が表記されていて、このレンズは「HG」と表記されている。 最初のHはHexaの略で6群構成である事を意味していて、次のGはアルファベット7番目なので7枚構成である事を意味している。 また、この時代のミノルタ製レンズは『緑のロッコール』と呼ばれていたけど、このレンズの反射面は緑ではなく青に見える。
絞り開放の中央付近はフレアっぽさは少ないけど柔らかい描写で、周辺に行くにしたがってボヤけてきて、極四隅はボヤボヤな感じだ。 F4に絞ると中央付近はシャープで良い描写になるが、画面四隅はまだボヤけている。 F5.6に絞れば画面四隅もシャープになるが、極々四隅はまだボヤけていて、F8まで絞れば極々四隅も我慢できる描写になる。 ただし、画面長辺がカットされる四つ切りプリントなどでは気が付かないかも知れない。 周辺光量落ちはそれなりに有るので、効果的に使えるだろう。
ところで、撮影画像の第一印象は発色が汚いという事だろう。 夕方ではなくお昼にオートホワイトバランスで撮影してあるけど、レンズが黄変しているのでAWBを使ってもマトモな色再現にはならないのだ。 太陽光で現像した画像と5000°K(色相も若干マゼンタ補正)で現像した画像を比較したのが以下の写真で、太陽光現像だと随分と黄色い事が判る。
太陽光で現像 と 5000°K+色相補正で現像 した画像を比較(F2.8開放)
以下の画像はレンズの黄変対策のため 5000°K+色相補正 を掛けて現像してある。 歪曲収差補正や色収差補正は掛けていないが、カメラJPEGと同程度のシャープネスは掛けてあります。
絞り開放でも画面中央50%あたりならフレア感は少ない描写だけど、画面周辺~隅にではフレアっぽい描写になる。 遠景とか平面的な被写体でなければピント位置なら絞り開放から使える描写で、ちょっと絞れば解像感の良い描写が得られる。 絞り込めばシャープな写りもみせてくれるが、ピントが合っていない画面隅の描写は汚いと感じる。
なお、逆光には弱く、画面外の空などが見渡せる場所では画面にパープル・シアンっぽいフレアカブリが出て来るが、コーティングの劣化もあるのだろう。 また、絞り開放での後ボケは2線ボケ・リングボケ傾向があり、少しクセのある背景描写となる。 画面周辺では輝点が半月型の2線ボケになるのでザワついたボケ味だけど、オールドレンズらしいクセとして楽しめる。
35mmという焦点距離は様々なシーンで使で易く、レンズを太陽に向けるとオールドレンズらしい盛大なフレアやゴーストが発生してくれる。 発色の調整を施すのも良いけど、懐古的に黄色く濁った発色はオールトレンズマニアに好まれるかも知れない。
このレンズは透過光が黄色いのだ。 いつからかは覚えてないけど、10年以上前に『何だか黄色くなったなぁ』と思っていた。 このレンズを積極的に使う事はなかったので気にしていなかったけど、デジカメで使ってみたらオートホワイトバランスでも黄色く写るシーンが多い。 ある程度の「黄色味」ならAWBが対応してくれて暖色系の発色となるけど、それ以上に黄色いと「黄色味」を残して汚い発色になってしまう。 各カメラメーカーで白の引き込み閾値などが異なるけど、ソニー機のオートホワイトバランスは優秀とは言えないと思う。
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