Carl Zeiss Planar 85mm F1.4 T* MMJ - 銘玉か迷玉か

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Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ
 ヤシカ/コンタックス用の明るい中望遠レンズで、Carl Zeiss ブランドだけどこの個体は日本製である。 当時からポートレイト撮影などでは銘玉だと絶賛する人が多かった。

Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* - 1975年発売

 1975年に発売された CONTAX RTS 用の Carl Zeiss ブランドレンズの後期型である。 前期型はAE型と呼ばれAE(Auto Exposure)仕様で自動露出は絞り優先しか使えなかったが、後期型はMM型と呼ばれMM(Multi Mode)仕様に変更されて自動露出はシャッター速度優先やプログラムモードなどが使える様になった。 新生CONTAX用の Carl Zeiss ブランドレンズには日本製とドイツ製があり、日本製はAEJとかMMJと呼ばれ、ドイツ製はAEGとかMMGと呼ばれていた。 日本製とドイツ製との描写上の違いがどうだったのかは知らない。 なお、本レンズは1986年にMM化された後期製品である。 MM化された製品は最小絞りが緑色になっているので見分けられる。

レンズ構成

Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ レンズ構成
レンズ構成
 5群6枚構成の拡張ダブルガウス型だけど、標準レンズの見慣れた拡張ダブルガウス型とは大きく異なり、絞りを挟んで前群側が後群側より大口径だし肉厚の凹レンズが用いられている。 確か1972年頃に殆ど同じ構成のレンズが Rolleiflex SL35 用に Planar HFT 85mm F1.4 として発売されていた。
 最短撮影距離が1mなので寄り足りなくて、『もう一歩寄りたい』と思う事が多いが、重量は595gの重めの鏡筒は作りは非常に良く、しっとりとした距離環の操作性も良い。 ただし、どの Carl Zeiss レンズにも言える事だけど、絞り環と距離環が近接していて固定された部分はレンズ先端部しかない。 このため、回ってしまうリングを握ってレンズ交換する事になり操作性が悪い。 絞り環と距離環の間にレンズ脱着時に握る固定部分が欲しかった。

67/86 RING + METAL HOOD 4
METAL HOOD 4
 新生CONTAXレンズには大きな金属フードシステムが用意されていて、このレンズの場合は 67/86RING を介して METAL HOOD 4 を使う。 金属フードは深さが異なる HOOD 1 から HOOD 5 まであるので、他社製レンズにも流用が可能だ。 そこでレンズが大きい HASSELBLAD の F/FEシリーズ の 50mm F2.8(HOOD 1)・80mm F2.8(HOOD 4)・150mm F2.8(HOOD 4)・250mm F4(HOOD 5) にステップアップリングを介して流用している。

描写特性

遠景描写

 以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを6000°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。

Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2
絞り:F2
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F4
絞り:F4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F5.6
絞り:F5.6
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8

 F1.4開放では画面全体がフレアっぽく、ハイライト部には色収差によるパープルフリンジが見られる。 F2に絞ると画面中央付近のフレア感は消えるが、画面周辺に行くほどフレアが残っている。 F2.8に絞ると画面中央付近はかなり良い描写となり、画面周辺に行くほど描写は低下するけど我慢できる描写だ。 F4まで絞ると画面全域で良い描写となるが、画面周辺の倍率色収差は認められる。 また、絞り開放ではそれなりの周辺光量落ちがあるけど、F2.8まで絞ると解消されてしまう。
 Planar 100mm F2 T* の方が良い描写をしてくれるけど、Planar 85mm F1.4 T* は「絞り値で描写特性の変化を楽しめるレンズ」と言えるかも知れない。

夜景描写

Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F4
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F5.6
絞り:F4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F4
絞り:F2.8

 F1.4開放ではフレアが多い描写で、画面周辺ではコマフレアにより夜景描写には適さない。 F2に絞ると画面中央はフレアが少なくなるが、画面隅にはコマフレアが残っている。 F2.8に絞ると画面隅も夜景にも使える描写になり、F4に絞ると画面全域で充分な夜景描写となる。
 絞り開放での玉ボケは画面周辺でレモン型になり、輪郭のエッジが立ち気味だ。 絞り開放以外では玉ボケが八角になり、F2だと画面隅の玉ボケがいびつなラグビーボール状となり、絞りF2.8では画面全域で八角形ボケとなる。

一般撮影

 記載の絞り値は記憶に頼っているので間違っているかも知れません。 また、RAW現像時にDレンジオプティマイザーをオフにしてオートホワイトバランスで現像しています。

Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4(モノクロ化)
絞り:F1.4(モノクロ化)
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4(モノクロ化)
絞り:F1.4(モノクロ化)
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Planar 1.4/85 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4

 F1.4開放ではフレアっぽくてソフトフォーカスレンズの様な描写で、ハイライト部には色収差によるパープルフリンジが見られる。 また、最短撮影距離ではフレアが増して高輝度部はホワホワな描写になる。 F2.8まで絞るとフレア感は消えるけど、画面周辺の解像感は不足ぎみだ。 また、1mの最短撮影距離は遠くて、もっと寄りたいと感じる場合が多い。

 小デフォーカス時の後ボケがざわつくので煩く感じるシーンもあるけど、デフォーカスが大きくなるほどボケは滑らかになってくる。 また、ハイライト部のボケ像周りには後ボケは緑色で前ボケは紫色に色が付く「色ボケ」があり、程度は一般的な明るいレンズ並みかチョット多い感じだと思う。

 太陽を画面内にいれたりするとゴーストが発生するけど、あまり派手に発生はしない。 それより逆光フレア。ハレーションの方が気になるけど、太陽を入れ込まなければ程度は良い方だと思う。

 絞り開放ではソフトな描写になるのでポートレイト向きなのかも知れないけど、ハイライトがある場合はモノクロ写真にしないと色収差が気になってしまう。 また、絞り開放では深度が浅いのだけれどフレアーによりピントの山が判り難く、ピント合わせに難儀する。 色乗りや発色は悪くないと思うけど、僕は昔から銘玉じゃなく迷玉だと感じていた。

あとがき

CONTAX用 Carl Zeiss のレンズ達
Carl Zeiss Lenses
 新生CONTAXを代表するCarl Zeissの銘玉と言われていたので購入してあったけど、個人的な使用感では『本当に銘玉なのぉ?』と思いつつ、打ち明けられないでいたレンズだ。
 誰もが銘玉だと言っていたので、難癖付けたら殺されそうだった。 なので Planar 100mm F2 を寵愛し、迷玉と感じる Planar 85mm F1.4 の使用頻度はとても低く、僕が持っている機材では不遇のレンズであった
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