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SIGMA-XQ MIRROR ULTRA-TELEPHOTO MULTI-COATED 1:4 f=500mm |
このレンズの存在を知ったのは今世紀になってからだ。 ロシア製反射望遠レンズ Rubinar 500mm F5.6 が意外に良かったので、2008年頃にeBayで別の明るい反射望遠レンズを探していて見つけたレンズだ。 eBayの出品者に尋ねたら『天体写真撮影に使っていた』というので、ダメレンズでは無いだろうと思って購入してみた。 だが、実際には....
SIGMA-XQ MIRROR ULTRA-TELEPHOTO MULTI-COATED 1:4 f=500mm
このレンズは1971年に発売されたらしく、この個体は「MULTI-COATED」と標記されているので後期タイプなのだろう。 Reflex-NIKKOR 500mm F5 の描写性能に対してもこのレンズはイマイチという印象だった。 初めてカメラを装着して覗いた時に『ん?像を結ばない!』と思ったほどだ。 天体写真撮影用と考えていたので、描写性能の第一印象にがっかりしてテスト撮影もしないでお蔵入りとなっていた。 今回、オールドレンズ記事を書くにあたり『そういえば、あのレンズもあったなぁ』という事で「お蔵」から引っ張り出してきた。 それにしても銘板に記載の SIGMA-XQ MIRROR ULTRA-TELEPHOTO MULTI-COATED 1:4 f=500mm という名称は長すぎる。
レンズ構成
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レンズ構成 青:ミラー面 |
このレンズは
Zeiss Mirotar 500mm f/4.5 に似た光学系で、前玉部が凹面を向き合わせにした2枚のメニスカスレンズで構成されている。 主鏡で反射した光束は第2メニスカスレンズ裏面の副鏡でカメラ側へ導かれる。 マウント部付近にダブレットレンズがあり、そのレンズを前後させる事でピント調節するインナーフォーカス式だ。 マウント付近で前後する直進カムによるピント調節なのでレンズ全長は変化しない利点があるけど、最短撮影距離は15mとかな~り遠い。 無限遠状態ではダブレットレンズがバッフル内の奥に入り込んでいて、至近状態にするとダブレットレンズがマウント側に寄ってくる。 なお、第1レンズと第2レンズとの間に遮光部材を兼ねたレンズ銘板が第2レンズに接着されている。 ちなみに、Mirotar 500mm f/4.5 は蛇腹式の後部繰り出し式だったと記憶している。
レンズ開口が140mm以上はあり、通常の屈折型超望遠レンズならF3.5相当の大口径だ。 開口径が大きいのは❝F4に相当❞の明るさにするためで、大きな中央遮蔽による光量低下を加味した口径なのである。 なお、資料が見つからなかったし分解してないので、掲載した構成図が正しいのか怪しいけど概ね合っているだろう。
レンズ鏡筒
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取っ手 兼 照準 |
全長は218mmで外径はΦ150mm(三脚座除く)もあり、天体望遠鏡の様だ。 反射望遠レンズは小型・軽量になるのだけれど、さすがに 500mm F4 となると3200gもの重さがあり、鏡筒頂部に取っ手が設けられている。 その持ち手部分が空洞になっていて照準も兼ねている。 また、鏡筒底部には三脚座が設けられていて、レンズ単体では重心がアンバランスだけど、カメラを装着すればバランスが取れる。
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フードと筒内遮光環 |
鏡筒内面にはフレア防止の遮光環が沢山設けられているので、天体望遠鏡並みに内面反射に気を配った設計にはなっている。 また、鏡筒前方にはフードが装着されていて Reflex-NIKKOR 500mm F5 よりは効果がありそうで、迫力のある容姿に貢献している。 外装はニコンのレトロ風な菱目ローレットに対して現代風の角目ローレットが外装全周に貼られているので滑る事はないが、取っ手はツルツルである。
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穴付きフロントキャップ |
レンズのフロントキャップには革製で「蓋付きの大穴」が開いていて、この穴が絞りとなって光量をF4相当からF5.6相当へ減らすことが出来る。 実用に問題はないけどヘナチョコなキャップなので、もっと剛性のある部材にしてほしかった。
マウント部
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マウント部はTネジ |
マウント部はM42 P=0.75のTネジになっていて、Tマウントを交換する事で各社のカメラを装着する事が可能だ。 Tマウント部のレンズ寄りに距離環があり梅鉢状のローレットが付いているけど、カメラを装着すると手を入れずらい。 距離環には1本の操作レバーが付いているのでレバーでピント調節するのが正式な方法だろう。 この距離環はフォーカス敏感度が高いし画質がイマイチなのでピントの芯を探るのに神経を使う。 また、マウント部だけを回転させる事ができ、ボタンを押してロック解除すれば縦横に構図変更が可能なのは便利だ。
レンズ前面にはアタッチメントネジがないけど、リア(マウント側)にΦ37.5mmのフィルターが装着出来るらしい。 「らしい」というのは試したことが無いからで、恐らくTネジの内側に切ってある内ネジにフィルターをネジ込んで使うのだと思われる。
テレコン等
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シグマ純正のテレコン |
このレンズには2倍テレコンバーターが標準付属品だったらしく、僕の中古個体には NIKON F マウントのシグマ純正テレコンが同梱されていた。 ただし、レンズ単体でも画質が良くないのでテレコンを使った場合の画質なんて想像したくもない。 また、レンズ単体では15mまでしか寄れないけど付属の延長筒を使えば3mまで近接する事が出来たらしい。 この中古個体には延長筒は同梱されていなかったので詳細は判らないけど、Tマウントの延長筒(M42 P=0.75 ネジの延長筒)だったと思われる。
ちなみに、シグマのテレコンは光学系が入った中筒を抜き取ることが出来るけど、内部開口が狭いので延長筒としては使えないと思うが、天体望遠鏡用のTネジ延長リングは持っている。 マウントを外すのは面倒なので、各カメラメーカー用の接写リングを延長筒として使った方が良いと思う。
撮影サンプル
SIGMA-XQ 500/4 |
SIGMA-XQ 500/4 蓋付き |
SIGMA-XQ 500/4 |
SIGMA-XQ 500/4 |
SIGMA-XQ 500/4 |
SIGMA-XQ 500/4 |
遠景では残存収差以外に陽炎の影響などによりモヤっとした描写にしかならない。 空気が澄んでいる冬の朝なら違った結果になるかもしれない。 また、焦点深度がF3.5相当とかなり浅いのでピント合わせに神経を使うし、合焦部以外には二線ボケ・リングボケによる特徴的な描写が現れる。 なお、デジカメのAWB撮影なら問題は少ないけど発色はかなり寒色系に寄っていて、ホワイトバランスを太陽光で撮影すると青っぽい写真になる。 いかにもアルミ蒸着ミラーという発色だけど、色収差は殆ど感じられないのだけが良い点だ。
周辺光量低下は崖落ちタイプになる...というか、ケラレてしまう。 撮影に使用したカメラ SONY ILCE-9 は射出瞳が短いレンズを前提にしたカメラなので、長大な射出瞳を持つレンズとは相性が悪いのだ。 また、フロントキャップで光量をF8相当に制限すると画質は悪いままで周辺光量低下が更にひどくなる。
ちなみに、陽炎が酷い条件では可能な限りシャッター速度を高速にすべきだ。 高速シャッターだとユラユラ陽炎がシャープに写るけど、1/500秒以下だとユラユラ陽炎が霞み風となってしまいシャープ感が極端に低下する。
あとがき
SIGMA-XQ MIRROR ULTRA-TELEPHOTO MULTI-COATED 1:4 f=500mm は描写にシャープ感が無いし実用的なレンズではないと思う。 「MULTI-COATED」と書かれているけど、像のコントラストも低い。デジタル撮影した
オリジナル画像にアプリを使って
回復処理すれば見られる様にはなるけど、細かい文字看板などが妙な事になったりする。 そこまでして使うべきレンズではないだろう。 武器の様にカッコ良いので、コレクションとして飾っておくのが良さそうだ。
アプリで回復処理すれば見られる画像にはなる(部分等倍クロップ)
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