Reflex-NIKKOR 500mm F5 - 飛ばし難い飛び道具

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Reflex NIKKOR 50cm F5 と NIKON F MOTOR DRIVE F-250
Reflex-NIKKOR 1:5 f=500mm と NIKON F MOTOR DRIVE F-250
 Reflex-NIKKOR 1:5 f=50cm が発売されたのは1961年だったので、NIKON F 発売の2年後には500mmの反射超望遠レンズが投入されていた事になる...しかも、明るいF5レンズだった。

Reflex-NIKKOR 1:5 f=500mm - 1961年発売

 Reflex-NIKKOR 500mm F5 は1961年から1968年まで生産され、「1:5 f=50cm」表記の前期型は711本製造されたらしく、「1:5 f=500mm」表記の後期型も含めると合計3000本ほどが製造されたらしい。 このレンズの前面開口径は120mmほどもあり、単純計算ならF4.2相当になる。 超望遠レンズの開放F値はほぼ「焦点距離÷開口径」なので、500mm F5 望遠なら口径は100mm程度となるハズだ。 ところが反射式望遠レンズには中央遮蔽が存在するので、❝F5相当❞の光量にするために開口径を大きくする必要があったのだ。

レンズ構成

Refrlex-NIKKOR 1:8 f=500mm レンズ構成図
レンズ構成図
 レンズ構成はマクストフカセグレイン型を基本とし、4群5枚構成で遮光バッフル(中筒)の中に凹レンズと凸レンズが入っているカタディオプトリック式(屈折・反射ハイブリッド)レンズである。 反射式にする事で、レンズの全長が焦点距離の半分程度にする事ができて、小型・軽量の超望遠レンズに仕上げられる。 一方、中央遮蔽があるため明確なリングボケとなるので独特の描写になってしまう。 また、光路ギリギリのサイズで遮光バッフルがあるため、内面反射などによりコントラストが低下し易い。
 レンズの明るさはF5相当だけど開口径はF4.2相当なので、通常のF5レンズより焦点深度も被写界深度も浅い特性を示す。 ちなみに中央遮蔽部が黄色いのは副鏡蒸着部を保護して第1レンズ裏面に接着する接着剤なのだろう。 望遠鏡によってはピッカピカの蒸着面が見えている製品もある。
 そういえば minolta RF ROKKOR 1:8 f=800mm では先頭の第1レンズ中央に穴を開けてヘリコイドを組み込み、副鏡のみを移動させる事でピント調節する方式を採用していた。 ただし、鏡筒前面外側から副鏡ヘリコイドを操作する1本のアームが伸びているので、画面中央でも輝点ボケが C 状になってしまう。 また、1本のアームにより輝点に2本の回折光芒が発生するだろう...多分。

フルターアタッチメント

リアフィルター取付け部 と レンズケース天井部
フィルター取付け部
 反射式望遠レンズでは絞り機構の搭載が困難なので、一般的に絞りは開放のままだ。 露出調節はシャッター速度とNDフィルターに頼るしかなく、レンズのマウント部にΦ39mmのフィルターネジが装備されている。 ニコンのΦ39mmフィルターは通常のレンズ前面フィルターとは異なり複数枚の取り付けには対応していないし、枠径がオスネジ部より小さくなっていてメスネジは切られていないが、手で回して脱着可能だ。 付属フィルターは5種類あり、常用のUV(L39)の他に NDx4 / Y52 / O56 / R60 の4種をレンズケースの天井に収納できる様になっている。 ちなみにフロントアタッチメントサイズはΦ122mmで、効果が低そうな浅いフードが標準装着されている。

ピント調節

 重量が1700gと超望遠レンズとしては軽めのレンズなので手持ち撮影も可能だけど、手持ち撮影での後部直進ヘリコイドによるピント操作には難儀する。 レンズを支える左手の指でヘリコイド環を回すのは至難の業なので、右手をカメラから離して右手でヘリコイド環を回そうとするとブレブレになってピントの山を掴めない。 一脚か三脚が無ければピント合わせが難しいレンズで、手持ち撮影の飛び道具として使うのは厳しい。
ピント調節は後部ヘリコイド式 マウント部回転ロック解除レバーも見えている
後部ヘリコイド式
 また、ピント合わせが全体繰り出し方式に等しいので最短撮影距離が15mと非常に遠くなり、近くにいる小鳥にはピントを合わせられない。 三脚座はレンズに完全固定されているけど、マウント部が90度回転・ロックさせられるので三脚使用でも迅速に縦横の構図を変更できる。 なお、後に発売される Refrlex-NIKKOR 1:8 f=500mm では太い鏡筒部がヘリコイドになっていて副鏡が付いた第1レンズを繰り出す方式(前玉+インナーフォーカス)に改められ、手持ち撮影でもピント合わせが楽になると同時に最短撮影距離が4mへ改善された。

撮影サンプル

Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
 遠景では陽炎の影響によりモヤっとした描写になってしまう。 空気が澄んでいる冬の朝なら違った結果になるかもしれない。 また、全体的に眠い感じで、画面周辺程眠いので単なる内面反射フレアの影響だけではなく残存収差の影響もある感じだ。 残念ながら絞りが無いので絞って画質を向上させる事は出来ない。 また、夜景写真からも画面周辺ほどコマフレアが多い事が判る。
 周辺光量低下はやや崖落ちタイプになる...というか、ケラレてしまう。 撮影に使用したカメラ SONY ILCE-9 は射出瞳が短いレンズを前提にしたカメラなので、長大な射出瞳を持つレンズとは相性が悪いのだ。

Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
Reflex-NIKKOR 500mm F5
 ボケ描写は2線ボケになり、輝点はリング状のボケになる。 これはこれで何かの効果として使えるだろうけど、画面周辺ではリングが欠けて 状になってしまうのが惜しい。 また、最短撮影距離が15m(0.036倍)までなので、ピントを合わせられないシーンが結構ある。

 被写体の周辺が明るいほどコントラストが低下して眠い画像になる。 これは陽炎の影響だけではなく鏡筒内面の乱反射による迷光が原因で、反射式天体望遠鏡では鏡筒内面に植毛紙を張ったりして内面反射を防ぐ工夫をしていた。 陽炎や迷光で画質・コントラストが低下した画像をアプリで回復処理もできるけど、操作性が悪いこのレンズで頑張って撮影する必要はないだろう。

回復処理

 Reflex-NIKKOR 500mm F5 で撮影したボヤけている画像を Topaz Photo AI Ver.4.0.0 で回復処理してみた。 あまり強く施すと不自然になるので「そこそこ」に抑えて処理してみた。 下の回復処理比較は、処理前後の画像の一部をピクセル等倍に切り出してある。

アプリで回復処理すれば見られる画像にはなる

あとがき

 ハッキリ言ってこんなレンズは全く不要だったけど、ニコン教の信者だった頃に入手してしまった。 確か Zoom-NIKKOR Auto 1:9.5 f=200mm~f=600mm の色収差に我慢できずに手放した後だったと思う。 色収差がない(少ない)反射望遠レンズを入手したけど、結局は殆ど使わないまま今に至っている。 このレンズに拘りが無い限り1983年に発売され、1.5m(0.4倍)まで寄れる Reflex-NIKKOR 500mm 1:8 で楽しむべきだ。
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