Carl Zeiss Distagon 35mm F1.4 T* MMJ - 不思議な魅力

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Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ
 ヤシカ/コンタックス用の明るい広角レンズで、Carl Zeiss ブランドだけどこの個体は日本製である。

Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* - 1975年発売

 1975年に発売された CONTAX RTS 用の Carl Zeiss ブランドレンズの後期型である。 前期型はAE型と呼ばれAE(Auto Exposure)仕様のみで自動露出は絞り優先しか使えなかったが、後期型はMM型と呼ばれMM(Multi Mode)仕様に変更されて自動露出はシャッター速度優先やプログラムモードなどが使える様になった。
 新生CONTAX用の Carl Zeiss ブランドレンズには日本製とドイツ製があり、日本製はAEJとかMMJと呼ばれ、ドイツ製はAEGとかMMGと呼ばれていた。 日本製とドイツ製との描写上の違いがどうだったのかは知らない。 なお、本レンズは1986年にMM化された後期製品である。 MM化された製品は最小絞りが緑色になっているので見分けられる。

レンズ構成

Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ レンズ構成
レンズ構成
 8群9枚構成のレトロフォーカス型で、1枚の研削非球面レンズを用いた独特のレンズ構成である。 ニコンは7群9枚構成の NIKKOR-N・C Auto 35mm F1.4 が1971年に発売しているが、それとは全く異なる構成だ。
 レンズ重量は600gなので少し重いけど、鏡筒の作りは素晴らしい。 このレンズにはダブルヘリコイドを用いたフローティング機構を搭載していて、無限遠から近距離まで像面湾曲の変動を抑えている。 分解していないので詳しい事は判らないけど、絞りより前側と後側とで繰り出し量を変えている様だ。 なお、距離環操作により絞りより後ろ側のレンズ群は直進ヘリコイドで繰り出されるが、前側のレンズ群が回転ヘリコイドで繰り出される。 ただし、フィルター枠は回転しない様になっている。 また、最短撮影距離は0.3mで、撮影倍率は0.18倍まで寄る事ができる。

67/86 RING + METAL HOOD 2
METAL HOOD 2
 フードなしでも大きな問題は無いけど、レンズ面を触ったりぶつけたりしない様にフードは付けた方が良い。 新生CONTAXレンズには大きな金属フードシステムが用意されていて、このレンズの場合は 67/86RING を介して METAL HOOD 2 を使う。 確かラバーフードも用意されていたと思うけど見た事が無い。 ちなみに、金属フードは深さが異なる HOOD 1 から HOOD 5 まであるので、他社製レンズにも流用が可能だ。 そこでレンズが大きい HASSELBLAD の F/FEシリーズ の 50mm F2.8(HOOD 1)・80mm F2.8(HOOD 4)・150mm F2.8(HOOD 4)・250mm F4(HOOD 5) にアダプターリングを介して流用している。

描写特性

遠景描写

 以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを6000°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。

Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2
絞り:F2
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F4
絞り:F4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F5.6
絞り:F5.6
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8

 F1.4開放では少しパープルなフレア感がありソフトな描写で、画面周辺にゆくほどフレアが増し解像も低下する。 F2に絞ると画面中央は良い描写となるが、画面周辺はフレアと解像低下が残っている。 F2.8に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写で画面四隅以外は充分な描写となり、F4に絞ると画面隅も良い描写となる。 素敵な周辺光量落ちがあるけど、絞りF2.8で殆ど判らなくなり、F4で解消してしまう。 風景などの遠景で画面極四隅までシャープに写すならF5.6まで絞った方が良いけど、通常はF2.8まで絞れば充分だろう。

夜景描写

Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2
絞り:F2
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F4
絞り:F4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8

 F1.4開放では輝点に収差フレアがあり、画面周辺ほどコマフレアが大きくなる。 F2に絞ると画面中央の収差フレアは少なくなるが、画面周辺のコマフレアはまだまだ多い。 F2.8に絞ると画面中央付近は良いけど、画面周辺にはコマフレアが残っている。 F4まで絞ると画面隅でも点像が点像らしくなる。
 絞り開放での玉ボケ具合は悪くないしエッジがもあまり目立たない。 ただし、研削非球面レンズの研削痕ムラが玉ボケ内に現れるので、玉ボケマニアにとっては大きな欠点である。 また、絞り開放以外は8角形ボケになり、F2.8以上に絞ると画面全域で形の揃った8角形ボケになる。 資料ではどれが非球面レンズなのか開示されていないが、研削痕ムラの「ヘソ」が画面周辺でも玉ボケ中央にあるので絞り付近のレンズに使われていると思われ、球面収差・コマ収差補正に使われていると思われる。

一般撮影

 記載の絞り値は記憶に頼っているので間違っているかも知れません。 また、RAW現像時にDレンジオプティマイザーをオフにしてオートホワイトバランスで現像しています。

Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
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Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F5.6
絞り:F5.6
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
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Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F5.6(DLO使用)
絞り:F5.6(DLO使用)
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
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Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F8
絞り:F8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F5.6
絞り:F5.6
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F2.8 EOS 20Da(カシオペア付近)
絞り:F2.8
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4
Carl Zeiss Distagon 1.4/35 T* MMJ 絞り:F1.4
絞り:F1.4

 F1.4開放では強いハイライト部にパープルフレアが目立つが、ハイライト部が無ければフレアは意外と目立たない。 ただし、絞り開放での解像感が低めではある。 少し絞れば解像感が向上し、遠景の画面周辺もシャープな描写になる。

 小デフォーカスの背景ボケがざわつく場合があるけど、大きな背景ボケなら汚さは目立たない。 また、輝点による玉ボケでは研削非球面レンズの研削痕ムラが玉ボケ内に現れる場合があるけど、少しでも面積がある物の玉ボケは問題ない。 なお、ハイライト部の前後ボケ周囲に色が付く「色ボケ」があるので気になるシーンもある。

 コントラストが高いため色乗りがとても良く、発色はニュートラルに近いのでカメラのオートホワイトバランスが適切に働いてくれる様だ。 なお、今回の写真ではDレンジオプティマイザーはオフで現像しているが、オンにすれば暗部が潰れ気味になるのを軽減できる。 ただし、絞り開放でのイイ感じの周辺光量落ちも軽減されてしまう。

 画面に太陽を入れ込むとゴーストが発生してくれるけど派手なゴーストではなく、レンズ枚数が多い割には逆光フレアやハレーションも少なくオールドレンズとしては優秀だ。 なお、ちょっと大きめの樽型ディストーションがあるので、直線基調の建物などを撮影すると気になるかも知れない。 また、フローティング機構により近距離でも像面湾曲が抑えられているけど、ほんの少しだけ像面がうねっている気がする。

  カシオペア付近の星野写真はAPS-Cサイズのカメラに装着して絞りF2.8で撮影(カメラJPEGを補正)しているが、輝星周りの色収差によるフレアが気になるし、APS-Cサイズでも画面周辺の星像が流れ気味なのが残念だ。

あとがき

CONTAX用 Carl Zeiss のレンズ達
Carl Zeiss Lens
 NIKKOR-N・C Auto 35mm F1.4 も魅力的なレンズだったけど、Carl Zeiss Distagon 35mm F1.4 T* は撮っていて楽しくなる不思議な魅力があるオールドレンズである。 各種性能を単独で評価したら高い評価ではないだろうけど、総合的な描写特性は楽しくなる不思議な魅力がある。
 当然ながら現代のレンズと比べると画面周辺性能などが劣るけど、1975年発売の 35mm F1.4 としては優秀なレンズだと思う。
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